自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 ブルザは一気に間合いを詰めると、目にも止まらぬ速さで剣を振り下ろしてくる。
 その剣速はレベル182の超人的強さにたがわずすさまじく、音速を超え、衝撃波を発しながら俺に迫った。
 しかし、俺はレベル千、迫る剣をこぶしで打ち抜いた。

パキィィーン!
 剣は砕かれ、刀身が吹き飛び……クルクルと回って倉庫の壁に刺さった。

「は!?」
 ブルザは何が起こったかわからなかった。
 俺はその間抜けヅラを右フックでぶん殴った。
「ぐはっ!」
 吹き飛んで地面を転がるブルザ。
 俺はツカツカとブルザに迫り、すごんだ。
「俺の大切なドロシーを何回()った? お前」
 怒りのあまり、無意識に『威圧』の魔法が発動し、俺の周りには闇のオーラが渦巻いた。
「う、うわぁ」
 ブルザはおびえながら、まぬけに後ずさりする。
「一回!」
 俺はブルザを蹴り上げた。
「ぐはぁ!」
 ブルザは宙を何回転かしながら倉庫の壁に当たり、落ちて転がってくる。
「二回!」
 再度蹴りこんで壁に叩きつけた。

 ブルザは口から血を流しながらボロ雑巾のように転がった。
「勇者の所へ案内しろ! ボコボコにしてやる!」
 俺はそう叫んだ。
 しかし……、俺は勇者の邪悪さをまだ分かっていなかったのだ。

 ブルザはヨレヨレになりながら起き上がると、嬉しそうに上着のボタンを外し、俺に中身を見せた。
 そこには赤く輝く火属性の魔法石『炎紅石』がずらっと並んでいた。
「え!?」
 俺は目を疑った。『炎紅石』は一つでも大爆発を起こす危険で高価な魔法石。それがこんなに大量にあったらとんでもないことになる。
「勇者様バンザーイ!」
 ブルザはそう叫ぶと炎紅石をすべて発動させた。
 激しい灼熱のエネルギーがほとばしり、核爆弾レベルの閃光が麦畑を、街を、辺り一帯を覆った――――
 爆発の衝撃波は白い球体となって麦畑の上に大きく広がっていく……。

 倉庫も木々も周りの工場も一瞬で粉々に吹き飛ばされ、まさにこの世の終わりのような光景が展開された。

 衝撃波が収まると、真紅のきのこ雲が立ち上っていく様子が見える。
 俺は直前に全速力で空に飛んで防御魔法陣を展開したが、それでもダメージを相当食らってしまった。パジャマは焼け焦げ、髪の毛はチリチリ、体はあちこち火傷で火ぶくれとなった。