自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 俺が見上げると、空からアバドンが降りてきて隣に着地した。

 俺は冷静さを装いながら言う。
「あの若い男を俺が挑発してドロシーから離すから、その隙に首輪を処理してくれ。できるか?」
「お任せください」
 ニヤッと笑うアバドン。
「よし、じゃ、お前は表側から行ってくれ!」
 俺はアバドンの肩をポンと叩いた。
「わかりやした!」

 俺は裏側の壁をもう一発どつき、倉庫の中に入る。
「ブルザ! 望み通り出てきてやったぞ! 勇者の腰巾着(こしぎんちゃく)のレイプ魔め!」
 俺はそう言いながら、ブルザから見える位置に立った。
「なんとでも言え、我々には貴族特権がある。平民を犯そうが殺そうが罪にはならんのだよ」
「お前だって平民だったんじゃないのか?」
「はっ! 勇者様に認められた以上、俺はもう特権階級、お前らなどゴミにしか見えん」
「腕もない口先だけの男……なぜ勇者はお前みたいな無能を選んだんだろうな……」
 ブルザの(まゆ)毛がぴくっと動いた。
「ふーん……、いいだろう、望み通り俺の剣の(さび)にしてくれるわ!」
 ブルザは剣を抜き、俺に向かってツカツカと迫った。
 俺はビビる振りをしながら、じりじりと後ろに下がる。
「どうした? 丸腰か?」
「ま、丸腰だってお前には勝てるんでね……」
 ツカツカと間合いを詰めてくるブルザ、ドロシーとの距離を稼ぐ俺……。
「ヒィッ!」
 俺はおびえて逃げ出すふりをして裏手へと駆けた。
「待ちやがれ! お前も殺せって言われてんだよ!」
 まんまと策に乗ってくるブルザ。

 アバドンはそれを確認すると、表のドアをそーっと開けて倉庫に入った。

「ぐわっ!」「ぐふっ!」
 アバドンがドロシーを押さえつけている男たちを殴り倒し、首輪の取り外しにかかる。
 しばらく倉庫の裏で巧みに逃げ回っていると、アバドンから連絡が入った。
「旦那様! OKです!」

 俺は逃げるのをやめ、大きく息をつくとブルザの方を向いた。
「ドロシーは確保した。お前の負けだ」
 俺がニヤッと笑うと、ブルザは
「もう一人いたのか……だが、小娘には死んでもらうよ」
 そう言って、嫌な笑みを浮かべながら何かを念じている。

 しかし……、反応がないようだ。
「え? あれ?」
 焦るブルザ。
「首輪なら外させてもらったよ」
 俺は得意げに言った。
「この野郎!」