その後、院長は薬草採りのやり方を丁寧に教えてくれた。院長も駆け出しのころはよくやったそうだ。

 俺の中身は20代、いつまでも孤児院の世話になっているわけにはいかない。早く成功への手掛かりを得て、自立の道を目指すのだ!









1-4. マジックマッシュルームの衝撃

 街の西側にあるでかい城門を抜けると麦畑が広がっている。今日はいい天気、どこまでも続く青空がとても気持ちいい。風がビューっと吹き、麦の穂が黄金色に輝きながら大きく揺れ、麦畑にウェーブが走る。俺は麦わら帽子が飛ばされないよう、ひもをキュッと絞った。
 この街道は、山を越えてはるか彼方王都まで続いているらしい。いつか商人として成功して、王都にも行ってみたい。そのためにはまずは元手だ。今日が俺の商人としてのスタートなのだ。絶対に成功させてやる。
 俺は麦畑の続く一本道を二時間ほど歩き、森の端についた。奥まで行くと恐ろしい魔物が出るらしいが、この辺りだと昼間であれば魔物の危険性はほとんどない。
 「護身用に」と院長から渡された年季ものの短剣が腰のホルダーにあることを確認し、大きく深呼吸して森の中へと入っていった。
 目につく植物は片っ端から鑑定し、レア度が★3以上の物を探す。
 しかし……、ほとんどが★1の雑草なのだ。あっても★2まで。分かってはいたが、ちょっと気が遠くなる。
 一時間ほど探し回ったが収穫はゼロ。まずい、このままでは帰れない。焦りが広がる。
 ちょっと先に小川が流れ、(がけ)になっている所を見つけた。
 崖は植生が変わっているので、期待大である。一目でたくさん鑑定できるので効率もいい。
 しばらく川沿いに歩きながら見ていくと……、見つけた!
 

アベンス レア度:★★★★
悪魔(ばら)いの効能がある


 これは凄い! いきなり★4である。俺は興奮して駆け寄った。
 しかし……崖の上の方に生えていて簡単には採れそうにない。三階建ての家の高さくらいだろうか、落ちたら死ぬだろう。
 諦めるか……命を懸けるか……俺はしばし悩んだ。
 小川のせせらぎがチロチロと心地よい音を立て、鳥がチチチチと遠くで鳴いている。

「よしっ!」