自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 しばらく見ていくと、幌馬車が置いてあるさびれた倉庫を見つけた。いかにも怪しい。俺は静かに降り立つと中の様子をうかがう。

「いやぁぁ! やめて――――!!」
 ドロシーの悲痛な叫びが聞こえた。ビンゴ!

 汚れた窓から中をのぞくと、ドロシーは数人の男たちに囲まれ、床に押し倒されて服を破られている所だった。バタバタと暴れる白い足を押さえられ、極めてマズい状況だ。
 すぐに助けに行こうと思ったが、ドロシーの首に何かが付いているのに気が付いた。よく見ると、呪印が彫られた真っ黒な首輪……、奴隷の首輪だ。あれはマズい、主人が『死ね!』と念じるだけで首がちぎれ飛んで死んでしまうのだ。男どもを倒しにいっても、途中で念じられたら終わりだ。強引に首輪を破壊しようとしても首は飛んでしまう。どうしたら……?
 俺は、ドロシーの白く細い首に巻き付いた禍々しい黒い筋をにらむ。こみ上げてくる怒りにどうにかなりそうだった。

 パシーン! パシーン!
 倉庫に平手打ちの音が響いた。

「黙ってろ! 殺すぞ!?」
 若い男がすごむ。

「ひぐぅぅ」
 ドロシーは悲痛なうめき声を漏らす。
 俺は全身の血が煮えたぎるような怒りに襲われた。ぎゅっと握ったこぶしの中で、爪が手のひらに食い込む。その痛みで何とか俺は正気を保っていた。
 軽率に動いてドロシーを殺されては元も子もないのだ。ここは我慢するしかない。ギリッと歯ぎしりが鳴った。

 俺は何度か深呼吸をしてアバドンに連絡を取る。
「見つけた、川沿いの茶色の屋根の倉庫だ。幌馬車が止まってるところ。で、奴隷の首輪をつけられてしまってるんだが、どうしたらいい?」
「旦那さまー! 良かったですー! 奴隷の首輪は私が解除できます。少々お待ちください~!」
 持つべきものは良い仲間である。俺は初めてアバドンに感謝をした。
 そうであるならば、俺は時間稼ぎをすればいい。

 ビリッ、ビリビリッ!
 若い男がドロシーのブラウスを派手に破いた。
 形のいい白い胸があらわになる。
「お、これは上玉だ」
 若い男がそう言うと、
「げへへへ」と、周りの男たちも下卑(げび)た笑い声をあげた。
「ワシらにもヤらせてくださいよ」
「順番な」
 そう言いながら、若い男はドロシーの肌に手をはわせた。