自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 と叫びながら、目にも止まらぬ速度で俺の背中にムチを叩きこんだ。

 ビシィ!

 ムチはレベル二百を超える圧倒的なパワーを受け、音速を越える速度で俺の背中に放たれた。服ははじけ飛び、ムチもあまりの力で折れてちぎれとんだ。
「イヤ――――!! ユータ――――!」
 悲痛なドロシーの声が店内に響く。
 誰もが俺の死を予想したが……。
 俺はくるっと振り向いて言った。
「これでお許しいただけますね?」

 勇者も従者たちもあまりに予想外の展開に、目を丸くした。
 レベル二百を超える『人族最強』のムチの攻撃に耐えられる人間など、あり得ないからだ。
「お、お前……、なぜ平気なんだ?」
 勇者は驚きながら聞いた。
「この服には魔法がかけてあったんですよ。一回だけ攻撃を無効にするのです」
 そう、ニッコリと答えた。もちろん、全くのウソである。レベル千を超える俺にはムチなど効くはずがないのだ。
「けっ! インチキしやがって!」
 そう言って勇者は俺にペッとツバを吐きかけ、
「おい、帰るぞ!」
 そう言って出口に向かった。
 途中、棚の一つを、ガン! と蹴り壊し、武器を散乱させる勇者。
 そして、出口で振り返ると、
「女! 俺の誘いを断ったことはしっかり後悔してもらうぞ!」
 そう言ってドロシーをにらんで出ていった。

「ユータ――――!」
 ドロシーは俺に抱き着いてきてオイオイと泣いた。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
 そう言いながら涙をポロポロとこぼした。
 俺は優しくドロシーの背中をなでながら、
「謝ることないよ、俺は平気。俺がいる限り必ずドロシーを守ってあげるんだから」
 そう言って、しばらくドロシーの体温を感じていた。
「うっうっうっ……」
 なかなか涙が止まらないドロシー。
 十二歳の頃と違ってすっかり大きくなった胸が柔らかく俺を温め、もう甘酸っぱくない大人の華やかな香りが俺を包んだ。
 あまり長くハグしていると、どうにかなってしまいそうだった。

     ◇

 最後の勇者の言葉、あれは嫌な予感がする。俺は棚から『光陰の杖』を出し、()の所にヒモをつけるとドロシーの首にかけた。

光陰の杖 レア度:★★★★
魔法杖 MP:+10、攻撃力:+20、知力:+5、魔力:+20
特殊効果: HPが10以上の時、致死的攻撃を受けてもHPが1で耐える