勇者はニヤッと笑った。
「おや……不敬罪だよな? お前ら見たか?」
勇者は従者を見る。
「勇者様を叩くとは重罪です! 死刑ですな!」
従者も一緒になってドロシーを責める。
「え……?」
青くなるドロシー。
俺は急いでドロシーを引っ張り、勇者との間に入る。
「これは大変に失礼しました。勇者様のような高貴なお方に会ったことのない、礼儀の分からぬ孤児です。どうかご容赦を」
そう言って、深々と頭を下げた。
「孤児だったら許されるとでも?」
難癖をつけてくる勇者。
「なにとぞご容赦を……」
勇者は俺の髪の毛をガッとつかむと持ち上げ、
「教育ができてないなら店主の責任だろ!? お前が代わりに牢に入るか?」
そう言って間近で俺をにらんだ。
「お戯れはご勘弁ください!」
俺はそう言うのが精いっぱいだった。
「じゃぁ、あの女を夜伽によこせ。みんなでヒィヒィ言わせてやる」
いやらしく笑う勇者。
「孤児をもてあそぶようなことは勇者様のご評判に関わります。なにとぞご勘弁を……」
勇者は少し考え……ニヤッと笑うと、
「おい、ムチを出せ!」
そう言って従者に手を伸ばした。
「はっ! こちらに!」
従者は、細い棒の先に平たい小さな板がついた馬用のムチを差し出した。
「お前、このムチに耐えるか……女を差し出すか……選べ。ムチを受けてそれでも立っていられたら引き下がってやろう」
勇者は俺を見下し、笑った。
ムチ打ちはこの世界では一般的な刑罰だ。しかし、一般の執行人が行うムチ打ちの刑でも死者が出るくらい危険な刑罰であり、勇者の振るうムチがまともに入ったら普通即死である。
「……。分かりました。どうぞ……」
そう言って俺は勇者に背中を向けた。
「ユータ! ダメよ! 勇者様のムチなんて受けたら死んじゃうわ!」
ドロシーが真っ青な顔で叫ぶ。
従者は『また死体処理かよ』という感じで、ちょっと憐みの表情を見せる。
俺はドロシーの頬を優しくなでると、ニッコリと笑って言った。
「大丈夫、何も言わないで」
ドロシーの目に涙があふれる。
「ほほう、俺もずいぶんなめられたもんだな!」
そう言って勇者は俺を壁の所まで引っ張ってきて、手をつかせた。
そして、ムチを思いっきり振りかぶり、
「死ねぃ!」
「おや……不敬罪だよな? お前ら見たか?」
勇者は従者を見る。
「勇者様を叩くとは重罪です! 死刑ですな!」
従者も一緒になってドロシーを責める。
「え……?」
青くなるドロシー。
俺は急いでドロシーを引っ張り、勇者との間に入る。
「これは大変に失礼しました。勇者様のような高貴なお方に会ったことのない、礼儀の分からぬ孤児です。どうかご容赦を」
そう言って、深々と頭を下げた。
「孤児だったら許されるとでも?」
難癖をつけてくる勇者。
「なにとぞご容赦を……」
勇者は俺の髪の毛をガッとつかむと持ち上げ、
「教育ができてないなら店主の責任だろ!? お前が代わりに牢に入るか?」
そう言って間近で俺をにらんだ。
「お戯れはご勘弁ください!」
俺はそう言うのが精いっぱいだった。
「じゃぁ、あの女を夜伽によこせ。みんなでヒィヒィ言わせてやる」
いやらしく笑う勇者。
「孤児をもてあそぶようなことは勇者様のご評判に関わります。なにとぞご勘弁を……」
勇者は少し考え……ニヤッと笑うと、
「おい、ムチを出せ!」
そう言って従者に手を伸ばした。
「はっ! こちらに!」
従者は、細い棒の先に平たい小さな板がついた馬用のムチを差し出した。
「お前、このムチに耐えるか……女を差し出すか……選べ。ムチを受けてそれでも立っていられたら引き下がってやろう」
勇者は俺を見下し、笑った。
ムチ打ちはこの世界では一般的な刑罰だ。しかし、一般の執行人が行うムチ打ちの刑でも死者が出るくらい危険な刑罰であり、勇者の振るうムチがまともに入ったら普通即死である。
「……。分かりました。どうぞ……」
そう言って俺は勇者に背中を向けた。
「ユータ! ダメよ! 勇者様のムチなんて受けたら死んじゃうわ!」
ドロシーが真っ青な顔で叫ぶ。
従者は『また死体処理かよ』という感じで、ちょっと憐みの表情を見せる。
俺はドロシーの頬を優しくなでると、ニッコリと笑って言った。
「大丈夫、何も言わないで」
ドロシーの目に涙があふれる。
「ほほう、俺もずいぶんなめられたもんだな!」
そう言って勇者は俺を壁の所まで引っ張ってきて、手をつかせた。
そして、ムチを思いっきり振りかぶり、
「死ねぃ!」



