自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 エレミーが唖然(あぜん)とした表情で聞いてくる。
「この魔人は俺の知り合いなんだよ」
「し、知り合い~!?」
 目を真ん丸にするエレミー。

「はい、旦那様にはお世話になってます」
 ニコニコしながら揉み手をするアバドン。

 パーティメンバーは、一体どういうことか良く分からずお互いの顔を見合わせる。
「通してくれるって言うから帰りましょう。無事帰還できてよかったじゃないですか」
 俺はそう言ってニッコリと笑った。

 ドアの向こうの床には青白く輝く魔法陣が描かれ、ゆっくりと回っている。これがポータルという奴らしい。
「さぁ、帰りましょう!」
 俺はそう言いながら魔法陣の上に飛び乗った。

 ピュン!

 不思議な効果音が鳴り、俺はまぶしい光に目がチカチカして思わず目をつぶった。
 にぎやかな若者たちの声が聞こえ、風が(ほお)をなでる……。
 ゆっくり目を開けると……澄みとおる青い空、燦燦(さんさん)と日の光を浴びる屋台、そして冒険者たち。
 そこは洞窟の入り口だったのだ。

        ◇

 帰り道、皆、無言で淡々と歩いた。
 考えていることは皆同じだった――――
 ヒョロッとした未成年の武器商人が地下80階の恐るべき魔物と知り合いで、便宜を図ってくれた。そんなこと、いまだかつて聞いたことがない。あの魔物は相当強いはずだし、そもそも話す魔物なんて初めて見たのだ。話せる魔物がいるとしたら魔王とかそのクラスの話だ。と、なると、あの魔物は魔王クラスで、それがユータの知り合い……。なぜ? どう考えても理解不能だった。

 街に戻ってくると、とりあえず反省会をしようということになり、飲み屋に行った。

「無事の帰還にカンパーイ!」
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」
 俺たちは木製のジョッキをぶつけ合った。
 ここのエールはホップの芳醇な香りが強烈で、とても美味い。俺はゴクゴクとのど越しを楽しむ。

「で、ユータ、あの魔物は何なんだい?」
 早速エドガーが聞いてくる。

「昔、ある剣を買ったらですね、その剣についていたんですよ」
 俺は適当にフェイクを入れて話す。
「剣につく? どういうこと?」
 エレミーは怪訝(けげん)そうに俺を見る。
「魔剣って言うんですかね、偉大な剣には魔物が宿るらしいですよ」