俺は硬くてパサパサしたパンをかじりながら、どうやって人生成功させたらいいか考える。孤児の身では一生うだつが上がらない。活躍もハーレムも夢のまた夢だ。俺が使えるのは唯一『鑑定』だけ。鑑定でひと財産築こうと思ったら……商売……かなぁ。『商人』だしな。しかし、商売やるには元手がいる。何で元手を稼ぐか……。ゲームの時は薬草集めからスタートしたから、まずは薬草集めでもやってみるか……。

 俺は食後に院長の所へ行き直談判する。
「院長、ちょっとお話があるんですが……」
「あら、ユータ君……何かしら?」
 昨日とは人が変わったような俺の言動に、やや警戒気味の院長。
 まずは昨晩のことを話し、子供たちに被害が出ないようにお願いした。
「あら、それは怖かったわね……。分かったわ、ありがとう」
 院長は対策について頭をひねって何か考えている様子だった。

「それからですね、実は薬草集めをして、孤児院の運営費用を少しですが稼ぎたいのです」
「えっ!? 君が薬草集め!?」
 目を丸くして驚く院長。
「もちろん安全重視で、森の奥まではいきません」
「でもユータ君、薬草なんてわからないでしょ?」
「それは大丈夫です。こう見えてもちょっと独自に研究してきたので」
 俺はにっこりと笑って胸を張って言う。
 いぶかしそうに俺を見る院長。そして、部屋の脇に吊るされていた丸い葉の枝を持ってきて俺に見せた。
「これが何かわかったらいいわよ」
 ドヤ顔の院長。
 なるほど、これは全く分からない。子供たちに使ってる薬草とも違う。
 しかし、俺には『鑑定』があるのだ。

 テンダイウヤク レア度:★★★
 月経時の止痛に使う

 なるほど、自分に使う薬だったか。
「テンダイウヤクですね、女性が月に一度使ってますね」
 俺は涼しげな声で答えた。
「え――――!!」
 驚いた院長は目を皿のようにして俺を見つめる。
「早速今日から行ってもいいですか?」
 俺はドヤ顔で聞いてみる。
 院長は目をつぶり、何かをしばらく考え……、
「そうよね、ユータ君にはそう言う才能があるってことよね……」
 と、つぶやき、
「わかったわ、でも、絶対森の奥まで行かないこと、これだけは約束してね」
 と、俺の目をまっすぐに見()えて言った。
「ありがとうございます。約束は守ります」
 俺はにっこりと笑う。