どうも、階段には上に行ったり、外に出られるポータルなどもあるらしい。帰りたい時に下だけというのは『はずれ』ということみたいだ。

 お通夜のように静まり返るメンバーたち。下に行くということは難易度が上がるということ、死に近づくことだ、気軽に返事はできない。

「まずは行ってみるしかないのでは?」
 僧侶のドロテが眼鏡を触りながら淡々と口を開いた。
 メンバーの中では一番冷静だ。
 みんなは覚悟を決め、階段を下りる。

       ◇

 階段を下りると、そこはいきなりデカいドアになっていた。高さ20メートルは有ろうかという巨大な扉。青くきれいな金属っぽい素材でできており、金の縁取りの装飾がされている。

「ボス部屋だ……どうしよう……」
 エドガーは頭を抱えた。
 ボス部屋は強力な敵が出て、倒さないと二度と出られない。その代わり、倒せば一般には出口へのポータルが出る。つまり一度入ったら地上に生還か全滅かの二択なのだ。
 しかし、さっきサイクロプスを見てしまったメンバーは到底入る気にはならない。あのサイクロプスよりもはるかに強い魔物が出てくるわけだから、どう考えても勝ち目などない。
「戻りましょう」
 ドロテは淡々と言う。
 しかし、俺としてはまた上への階段を探し、案内し、を繰り返さねばならないというのは避けたい。とっととボスを倒して帰りたいのだ。
 そこで、俺は明るい調子でにこやかに言った。
「大丈夫です。私、アーティファクト持ってますから、ボスを一発で倒します」
「おいおい! そう簡単に言うなよ、命かかってるんだぞ!」
 ジャックは絡んでくる。
「大丈夫です。サイクロプスだって一発だったんですよ?」
 俺はにっこりと笑って言う。
「いや、そうだけどよぉ……」

 エドガーは覚悟を決め、
「そうだな……、ユータが居なければさっきのサイクロプスで殺されていたんだ。ここはユータに任せよう。どうかな?」
 そう言って、みんなを見回す。
 みんなは暗い顔をしながらゆっくりとうなずいた。





1-18. 恐るべき魔物、ダンジョンボス

「じゃぁ行きましょう!」
 俺は一人だけ元気よくこぶしを振りあげてそう叫ぶと、景気よくバーンと扉を開いた。