「階段ありましたよー!」
 遠くに見えてきたみんなに、俺は手を振りながら叫ぶ。
 エレミーは、駆け寄ってきて
「ユータ! あれっ! 服が焦げてるじゃない! 大丈夫なの?」
 と、目に涙を浮かべて言う。
「え?」
 俺はあわてて服を見ると、革のベストが焼け焦げ、ヒモもちぎれていた。
 ハーピーにやられたことを忘れていた。
「ユータ、ごめん~!」
 そう言うとエレミーはハグしてきた。
 甘くやわらかな香りにふわっと包まれ、押し当てられる豊満な胸が俺の本能を刺激する。いや、ちょっと、これはまずい……。
 遠くでジャックが凄い目でこちらをにらんでいるのが見える。
「あ、大丈夫ですから! は、早くいきましょう。魔物来ちゃいますよ」
 そう言ってエレミーを引きはがした。
「本当に……大丈夫なの?」
 エレミーは服が破れてのぞいた俺の胸にそっと指を滑らせた。
「だ、だ、だ、大丈夫です!」
 エロティックな指使いにヤバい予感がして、エレミーを振り切ってリュックの所へ走った。心臓のドキドキが止まらない。

 エドガーは、心配そうに
「階段はどこに?」
 と、聞いてくる。
「あっちに二十分ほど歩いたところに小さなチャペルがあって、そこにあります」
「チャペルの階段!?」
 ドロテはそう言うと天を仰いだ。
 チャペルにある階段は『呪われた階段』と呼ばれ、一般に厳しい階につながっているものばかりだそうだ。
 みんな黙り込んでしまった。

 強い風がビューっと吹き抜け、枝が大きく揺れ、サワサワとざわめく。

「とりあえず行ってみよう!」
 エドガーは、大きな声でそう言ってみんなを見回す。
 みんなは無言でうなずき、トボトボと歩き出した。

 アルはひどくおびえた様子でキョロキョロしているので、
「この辺は魔物いなかったよ、大丈夫大丈夫」
 と、背中を叩いて元気づけた。
 アルは、
「ニ十分歩いて魔物が出ないダンジョンなんてないんだよ! ユータは無知だからそんな気楽なことを言うんだ!」
 と、涙目で怒る。まぁ、正解なんだが。

        ◇

 無事階段についたが、みんな暗い表情をしている。
「やはりさらに下がるしかないようだ……。みんな、いいかな?」
 エドガーはそう、聞いてくる。