爆心地から周囲数キロは木々もなぎ倒され地獄絵図と化していた。石造りの所はあらかた吹っ飛び、崩れたガレキの脇にはぽっかりと黒い穴が開いている。どうやら地下通路のようだ。
 俺はまだ熱気が立ち上る遺跡に降り立つ。周りを見渡すと、まるで空爆を受けた戦場である。焼け焦げた臭いが充満し、石も所々溶けている。気軽に放った初級魔法がこんな地獄を生み出すとは……。俺は背筋が凍った。

 通路の所へ行ってみると、石が不安定な形で入り口を邪魔している。俺はまだ熱い石をポイポイと放って入り口を掘り出すと、中へと進んだ。
 中はダンジョンのように石で作られた通路がずっと続いていた。俺は魔法の明かりをつけ、索敵の魔法で警戒しながら進んでいく。ジメジメとカビ臭く、不気味な雰囲気である。
 しばらく進むと突き当りが小部屋になっていて、中にかすかな魔力の反応が見える。入口には木の扉があったようだが朽ち果ててしまい、残骸を残すばかりである。
 慎重に小部屋の中を(のぞ)くと、そこには台座があって一本の剣が刺さっていた。いかにもいわくありげな剣である。
 鑑定してみると……、

|東方封魔剣 レア度:★★★★★
長剣 強さ:+8、攻撃力:+50、バイタリティ:+8、防御力:+8
特殊効果: 魔物封印

「キタ――――!!」
 ★5の武器は国宝レベルであり、一般に見かけることなどほとんどない。ついに俺は★5に出会うことができたのだ。俺は嬉しさのあまりガッツポーズを繰り返した。

 しかし……である。封魔剣ということは、魔物が封印されているに違いない。
 抜けば魔物は出てきてしまう。誰にも倒すことができず、封印でごまかしたような強敵を呼び起こしてしまっていいのだろうか?
 うーん……
 しばらく悩んだが、俺のレベルはもはや勇者の五倍だ。勇者が五人集まるよりもはるかに強いのだ。どんな奴でもなんとかなりそうな予感はする。
 俺は意を決して剣をつかむと、力いっぱい引き上げた――――。








1-13. 封印されし魔人


「ぬおぉぉぉ!」
 (つば)を持って全力で引っ張る……が、抜けない。レベル千の怪力で抜けないとは思わなかった。どれだけ俺は剣に嫌われているのだろうか……。
 頭にきたので、引いてダメなら押してみなってことで、思いっきり押しこんでやった。

「うおぉりゃぁ!」