そう言って俺は金貨一枚を店主に渡した。
「えっ!? そ、そりゃもう! どうぞ、朝までお楽しみください!」
 そう言って店主はニッコリと笑った。

      ◇

 街灯に照らされた石畳の道をドロシーと歩く。

「ユータにまた助けてもらっちゃった……」
 下を向きながらドロシーが言う。
「無事でよかったよ」
「これからも……、助けてくれる?」
 俺の顔をのぞきこんで聞いてくる。
「もちろん。でも、ピンチにならないようにお願いしますよ」
「えへへ……。分かったわ……」
 ドロシーは両手を組むと、ストレッチのように伸ばした。

「結局、どこで働くことにするの?」
「うーん、やっぱりメイドさんかな……。孤児が働く先なんてメイドくらいしかないのよ」
「良かったらうちで働く?」
 俺は勇気を出して誘ってみた。
「えっ!? うちって?」
 ドロシーは驚いて歩みを止めてしまった。
「ほら、うち、商売順調じゃないか。そろそろ経理とか顧客対応とかを誰かに頼みたいと思ってたんだ」
「やるやる! やる~!」
 ドロシーは片手をパッとあげて、うれしそうに叫んだ。
「あ、そう? でも、俺は人の雇い方なんて知らないし、逆にそういうことを調べてもらうことからだよ」
「そのくらいお姉さんに任せなさい!」
 ドロシーはそう言って、胸を張り、ポンポンと胸を叩いた。

「じゃぁ何か食べながら相談しようか?」
「そうね、お腹すいてきちゃった」
「ドロシーの時間は俺が朝まで買ったからね。朝まで付き合ってもらうよ」
 俺はちょっと意地悪な事を言う。
「え!? エッチなことは……、ダメよ?」
 ドロシーが真っ赤になって言う。
 ちょっとからかうつもりがストレートに返ってきて焦る俺。
「あ、いや、冗談だよ」
 俺も真っ赤になってしまった。

     ◇

 こうして俺は従業員を一人確保した。ドロシーは読み書きそろばん何でもこなす利発な娘だ。きっといい仕事をしてくれるだろう。明日からの仕事が楽しみになった。

 圧倒的世界最強になり、可愛い女の子と一緒に順調な商売。俺はまさに絶好調の日々を過ごし、運命の十六歳を迎える――――。







1-12. レベル千の猛威