自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 俺はドキドキする心臓を押さえながら言った。
「魔法の練習?」
「うん、できるかなーと思ったけど、全然ダメだね」
「魔法使いたいならアカデミーに通わないとダメよ」
「アカデミー……。孤児じゃ無理だね……」
「孤児ってハンデよね……」
 ドロシーがため息をつく。

「院長に教わろうかなぁ……」
「え? なんで院長?」
 ドロシーは不思議がる。
「あー、院長だったら知ってるかなって……」
 院長が魔術師な事は、俺以外気づいていないらしい。
「さすがにそれは無理じゃない? あ、丁度院長が来たわよ、いんちょ――――!」
 ドロシーは院長を呼ぶ。
「あら、どうしたの?」
 院長はニコニコしながらやってきた。

「院長って魔法使えるんですか?」
「えっ!?」
 目を丸くして驚く院長。
「ユータが院長に魔法教わりたいんですって!」
 院長は俺をジッと見る。
「もし、使えるならお願いしたいな……って」
 俺はモジモジしながら言った。
「ざーんねん。私は魔法なんて使えないわ」
 にこやかに言う院長。
「ほらね」
 ドロシーは得意げに言う。

「あ、ユータ君、ちょっと院長室まで来てくれる? 渡す物あるのよ」
 院長はそう言って俺にウインクをした。
「はい、渡す物ですね、わかりました」
 俺は院長の思惑を察し、淡々と答えた。

          ◇

 二人で院長室に入ると、院長は、
「そこに腰かけて。今、お茶を入れるわね」
 そう言って、ポットのお茶をカップに入れてテーブルに置いた。

「いきなりすみません」
 俺は頭を下げる。
「いいのよ。誰に聞いたの?」
 院長はニッコリとほほ笑みながらお茶を一口飲んだ。

「ギルドに出入りしているので、そういううわさを聞きまして」
 俺は適当に嘘をつく。
「ふぅん。で、魔法を教わりたいってことね?」
「はい」
 院長は額に手を当て、目をつぶって何かをじっと考えていた。
 重苦しい時間が流れる。

「ダメ……、ですか?」
 院長は大きく息をつくと、口を開いた。
「私ね……、魔法で多くの人を殺してしまったの……」
「えっ!?」
 意外なカミングアウトに俺は凍り付いた。
「十数年前だわ、魔物の大群がこの街に押し寄せてきたの。その時、私も召集されてね、城壁の上から魔法での援護を命令されたわ」
「それは知りませんでした」