自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 すごく心配そうなドロシーに軽くキスをして車を降り、うーんと伸びをした。
 さて、研修の成果は通用するだろうか?
 俺はまず見晴らしのいい所にピョーンと飛んだ。

 はるか東、房総半島の向こう側にうごめく九州サイズの巨大蜘蛛。その体は(かすみ)の向こうにはるか宇宙にまで達し、太さ何キロもある巨大な足が雲を突き抜け、何本も屹立(きつりつ)して見える。このままSF小説の表紙になりそうな圧倒的迫力のビジュアルに俺はちょっとたじろぐ。なぜ、退治したはずのうちの世界の蜘蛛が日本に出現したのか、全く見当もつかない。しかし、俺が日本のみんなを、世界を(まも)るのだ。今、護れるのは俺しかいないのだから。
 俺は大きく深呼吸を繰り返し、心を落ち着ける。
 そして、指で輪を作り、指の輪越しに蜘蛛を見た。この輪を臨時の情報ウィンドウとし、蜘蛛を拡大し、各種ステータスを表示させる。
「ふむふむ……。ヌチ・ギめ、巧妙な事しやがって……、相当手が込んでやがる……」
 俺はつぶやきながら蜘蛛の構成データへアクセスを試みる。

 バチッ!

 次の瞬間脳が揺れた、攻勢防御だ。
 俺は思わず尻もちをつき、大きく息をついて首を振った。危なかった、意識が飛ぶ所だった。
 でも、俺はこのアクセスで蜘蛛のセキュリティの脆弱性を見つけたのだった。ゲームばかりやってコンピューターシステムの穴を探す事ばかりしてきた経験が、こんな所に生きるとは。

「では、蜘蛛退治にシュッパーツ!」
 俺はそう叫ぶと蜘蛛に向けて飛び立った。激しい衝撃波を立てながら超音速で神奈川県上空を突っ切っていく。
 『地球を救え』と命令されて飛び立つ俺、それは子供の頃に見たアニメ番組そのものだった。子供だましの荒唐無稽な話だと思っていたが、今まさに俺がそれをやっている。
 暗い部屋でゲームばかりやって命を落とした俺。それが可愛い嫁さんをめとり、女の子を授かり、今、ゲームで磨いたスキルで巨大な敵に立ち向かっていく。
 人生って面白いものだな……。
 房総半島を過ぎ、いよいよ巨大な蜘蛛が目の前だ。

防御無効(ペネトレート)!」
 俺はそう叫ぶとイマジナリーを蜘蛛全体に走らせる。
 激しい閃光が太平洋を覆った……。






6-18. 限りなくにぎやかな未来

 こうして俺は、管理者としての第一歩を無事踏み出すことができた。