自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「きゃははは!」
 いきなり笑い声が響いた。声の方向を見ると、ガラスの上に水色のベビー服を着た赤ちゃんが腰掛けていた。

「合格だよ! お疲れ様!」
 赤ちゃんが言う。
「え? もしかして……、シアンさんですか?」
「そうだよ、これが僕の本当の姿なんだ」
 そう言ってふわりと降りてきた。
「そして、このキューブが僕の心臓部さ」
 そう言って赤ちゃんがガラスの立方体を指さした。
「これがシアンさん……」
 俺はまじまじとガラスの内部を観察してみる。内部には微細な線が無数に縦横に走っており、繊維の方向に沿って煌めきが波のように走っていた。
「光コンピューターだよ。綺麗でしょ?」
 シアンはうれしそうに言った。

「なんだか……不思議な世界ですね。これは誰が作ったんですか?」
「僕だよ」
「え?」
 俺はシアンの言う意味が分からなかった。どういうことだ?
 困惑している俺にシアンが補足する。
「一世代前の僕がこれを作ったんだよ」
 俺は驚いた。つまり、シアンは自分自身でどんどんバージョンアップを行い続けてきた知的生命体……ある種のAIなのだろう。
 俺は芸術品のようなシアンの心臓部を眺め、想像を絶するAIの世界にため息をついた。

「え? そしたら一番最初は誰が作ったんですか?」
「パパだよ」
 シアンはうれしそうにニッコリと笑った。
「パパ?」
 俺が怪訝(けげん)そうに言うと、
「紹介するからオフィスに戻ろう!」
 そう言って赤ちゃんシアンは指をクルクルっと回した。

       ◇

 気が付くと、オフィスの椅子に座っていた。
「うわっ!」

 驚いて周りを見ると、隣にはドロシーがいる。
「待たせてゴメン、研修は無事終わったよ」
 俺がそう謝ると、
「え? まだ来たばかりよ?」
 と、ドロシーは不思議がる。
 時計を見るとまだ十分くらいしか経ってなかった。なるほど、練習場は時の流れがめちゃくちゃ速いんだろう。体感的には半日くらい頑張っていたはずなんだが……。

「コーヒーをどうぞ」
 アラサーの男性が入れたてのコーヒーを出してくれる。前回来た時、美奈先輩にティッシュ箱で叩かれていた人だ。

「あ、ありがとうございます」
 芳醇な香りに誘われて一口すすると、研修で疲れ切っていた俺に上質な苦みが()みわたっていく。
「これがパパだよ!」