すると、奥のテーブルでエドガーが振り向く。

「お、坊主、どうしたんだ?」
 と、にっこりと笑う。
 俺はそばまで行って紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣を見せた。
「昨日のお礼にこれどうぞ。重いですけど扱いやすく切れ味抜群です。防御もしやすいと思います」
「え!? これ?」
 エドガーは紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣の大きさに面食らう。
 エドガーが使っているのは

ロングソード レア度:★
長剣 攻撃力:+9

 それに対し、紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣は圧倒的にステータスが上だがサイズもデカい。ただ、『強さ』も上がるので振り回しにくいデメリットは相殺してくれるだろう。

紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣 レア度:★★★★
大剣 強さ:+5、攻撃力:+40、バイタリティ:+5、防御力:+5、氷耐性:+1、経験値増量

 エドガーは、
「大剣なんて、俺、使ったことないんだよなぁ……」
 と、気乗りがしない様子だ。
 すると、同じテーブルの僧侶の女性が、
「裏で試し切りしてみたら? これが使いこなせるなら相当楽になりそうよ」
 そう言って丸い眼鏡を少し上げた。

 エドガーは、ジョッキをあおって、エールを飲み干すと、
「まぁやってみるか」
 そう言って俺を見て、優しく頭をなでた。

 裏のドアを開けるとそこは広場になっており、すみっこに藁でできたカカシの様なものが立っていた。これで試し斬りをするらしい。カカシは『起き上がりこぼし』のように押すとゆらゆらと揺れ、剣を叩きこんでもいなされてしまうため、剣の腕を見るのに有効らしい。
 エドガーは紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣を受け取るとビュンビュンと振り回し、
「え? なんだこれ? 凄く軽い!」
 と、驚く。
 紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣が軽い訳ではなく、ステータスの『強さ』が上がっただけなのだが、この世界の人はステータスが見えないので、そういう感想になってしまう。
「どれどれ、行きますか!」
 そう言うと、
「あまり無理すんなよー!」「また腰ひねらんようになー!」
 やじ馬が五、六人出てきて、はやしたてる。
「しっかり見とけよ!」
 やじ馬を指さしてそう言うと、エドガーは大きく深呼吸を繰り返し、カカシを見据え……、そして、目にも止まらぬ速さでバシッと紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣を打ち込んだ。