ドロシーは丁寧に剣の(つば)を磨き上げる。だいぶ綺麗になったが、なかなか取れない汚れがあって、ドロシーは何かポケットから取り出すとコシコシとこすった。
 綺麗にすると何かステータス変わらないかなと、俺は何の気なしに剣を鑑定してみる。


青龍の剣 レア度:★★★
長剣 強さ:+2、攻撃力:+30、バイタリティ:+2、防御力:+2、経験値増量


「ん!?」
 俺はステータス画面を二度見してしまう。
 『経験値増量』!?
「ちょっ! ちょっと待って!」
 俺は思わず剣を取って鑑定してみる。しかし、そうすると『経験値増量』は消えてしまった。これは一体どういうことだ……?
「ちょっと持ってみて」
 ドロシーに持たせてみる。しかし『経験値増量』は消えたまま……。一体これはどういうことだろう?
 俺が不思議がっていると、ドロシーはまた汚れをこすり始めた。すると『経験値増量』が復活した。
「ストップ!」
 俺はドロシーの手に持っているものを見せてもらった。
 それは古銭だった。そして、古銭を剣につけると『経験値増量』が追加されることが分かった。

「やった――――!!」
 俺はガッツポーズをして叫んだ。
 ポカンとするドロシー。

「ドロシー!! ありがとう!!」
 俺は感極まって思わずハグをする。
 これで経験値が減る問題はクリアだし、剣の性能を上げる可能性も開かれたのだ。
 俺は甘酸っぱい少女の香りに包まれる……。

 って、あれ? マズくないか?

 月夜の時にずっとハグしてたから、無意識に身体が動いてしまった。

「あ、ごめん……」
 俺は真っ赤になりながら、そっとドロシーから離れた。

「ちょ、ちょっと……いきなりは困るんだけど……」
 ドロシーは可愛い顔を真っ赤にしてうつむいた。

「失礼しました……」
 俺もそう言ってうつむいて照れた。
 それにしても『いきなりは困る』ということは、いきなりでなければ困らない……のかな?
 うーん……。

 日本にいた時は女の子の気持ちが分からずに失敗ばかりしていた。異世界では何とか彼女くらいは作りたいのだけれど、いぜん難問だ。もちろん十歳にはまだ早いのだが。

「と、ところで、なんでこれでこすってるの?」
 俺は話を変える。