するとおじいさんはフッと笑うと、
「そりゃぁ武器は美しいよ。でも、儲かるような仕事じゃないぞ?」
「大丈夫です、まず試したいので……」
 おじいさんは俺の目をジッと見る。そして、
「分かった、じゃぁ明日、ここへおいで」
 そう言って、おじいさんは小さなチラシを年季の入ったカバンから出して、俺に渡した。
「ありがとうございます!」
 俺はお礼を言うと、三本の剣を抱え、ウキウキしながら孤児院の倉庫へと走った。

      ◇

 倉庫に水を汲んできて早速紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣を研ぎ始めた。錆びだらけなのはすぐに落ちるが、刃こぼれは頭が痛い。刃こぼれした分、全部研ぎ落さねばならないからだ。なのに、めちゃくちゃ刀身が硬く、研いでも研いでもなかなか削れていかない。さすが★4である。
 しかし、諦めるわけにもいかない。俺は砥石を諦め、庭に転がっていた石垣の崩れた石を二個持ってきた。かなりザラザラするから粗研ぎには良さそうだ。水をかけ、まずは石同士でこすり合わせて面を出す。しばらくするといい感じになってきたので剣を試しに研いでみた。するとジョリジョリと削れていって、砥石よりはいい感じである。俺は調子に乗って景気よく研いでいく。
 しかし、ヒョロッとした孤児の俺ではすぐに疲れてしまう。

「ふぅ……何やるにしても身体鍛えないとダメだなぁ……」
 ボーっと休みながらつぶやいた。

「な~に、やってるの?」
「うわぁ!」
 いきなり後ろから声を掛けられてビビる俺。
「そんなに驚くことないでしょ!」
 振り返るとドロシーがムッとしている。銀髪に透き通る白い肌の美しい少女は、ワンピースの様な水色の作業着を着て俺をにらむ。

「ゴメンゴメン、今度武器をね、売ろうと思ってるんだ」
 そう言って、石に水をかけ、剣を研ぐ。
「ふーん、ユータずいぶん変わったよね?」
 ドロシーはそう言って俺の顔をのぞき込む。
「まぁ、いつまでも孤児院に世話になってはいられないからね」

 ジョリジョリと倉庫内に研ぐ音が響く。
「あの時……ありがとう」
 ドロシーはちょっと恥ずかしそうに下を向いて言った。
「大事にならなくてよかったよ」
 俺は研ぎながら淡々と返した。
「本当はね、ユータって手に負えない悪ガキで、ちょっと苦手だったの……」
「俺もそう思うよ」
 ちょっと苦笑しながら応える。