自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 ヌチ・ギの仕業だろう。月の軌道をいじるなんて、とんでもない事をしやがる。ラグナロク開始を世界中に知らせるためだろうが、実に困った。こんな真っ暗では上下も諏訪湖も戦乙女(ヴァルキュリ)の位置も全く分からない。
『あなた、どうしたの!?』
「いきなり真っ暗になった。何も見えないんだ」
 俺はつかみかけていた調子をいきなり崩された。
 戸惑っていると、ドロシーが叫んだ。
『ダメ! 危ない、逃げてぇ!!』
 俺は急いで方向転換をしたが……、間に合わなかった。
 戦乙女(ヴァルキュリ)の真っ赤に輝く巨大な剣がキラッと舞い……、

 ガスッ!
 戦乙女(ヴァルキュリ)の渾身の一撃が俺の胸にまともに入った……。
「グォッ!」
 俺は全身に燃え上がるような痛みが貫き、うめいた。
 飛行魔法が解け、きりもみしながら落ちていく……。
『いや――――! あなたぁ!!』
 ドロシーの悲痛な叫び声が響いた。

 ドスッ!
 地響きを伴いながら激しく地面に叩きつけられ、俺は意識を失った。

 真龍を真っ二つにした剛剣がまともに入って上空から墜落……、誰しも俺の死を疑わなかった。
 妖しく揺れる皆既日食に覆われた戦場には、静けさが戻ってきた。










4-12. 本番行ってみようか

 そこは暗闇……、なぎ倒されて(くす)ぶる木々の間で、俺は目を開ける。
 俺は衝撃で意識が混濁し、自分が今、何をやっているのか分からなかった。

 見上げると満天の星空の中に美しい光のリングが浮かんでいる。リングから放たれる幻想的な光芒(こうぼう)は、まるでこの世の物とは思えない禍々しさを持って俺の目に映った。

『あなたぁ! 聞こえる? あなたぁ! うっうっうっ……』
 ドロシーの声が頭の奥に響く……。

 ドロシー……、俺の愛しい人……、どうしたんだろう……。
 身体のあちこちが痛い……。

「いててて……」
『あなたぁ! 大丈夫?』

 ここで俺はようやく正気を取り戻した。
「あ、あれ? 生きてる……」
『あなたぁ! 無事なの!?』
「うん、まぁ、なんとか……」
『あなたぁ……、うわぁぁん!』
 ドロシーの泣き声を聞きながら、俺は斬られたところを見てみた。すると、胸ポケットに入れていたバタフライナイフがひしゃげていた。なるほど、こいつが俺を守ってくれたらしい。