自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 壁を通り抜けると、まぶしい光、爽やかな空気……目が慣れてきて辺りを見回すと、目の前には鬱蒼(うっそう)とした森が広がっていた。
 エレベーターはまるで地下鉄の出入り口のエレベーターのように、森を切り開いた敷地の境目にポツンと出入り口だけが立っていたのだ。
 そっと出入り口側の様子を見ると、豪奢な装飾が施された鉄のフェンスの向こうに見事な庭園があり、その奥に真っ黒いモダンな建物があった。あれがヌチ・ギの屋敷だろう。高さは五階建てくらいで、現代美術館かというような前衛的な造りをしており、中の様子はちょっと想像がつかない。
 あの中でドロシーは俺の助けを心待ちにしてるはずだ。
「ドロシー、待ってろよ……」
 ドロシーがまだ無事であること、それだけを祈りながら必死に屋敷の様子を調べる。

 まず、俺は鑑定を使ってセキュリティシステムを調べてみる。門やフェンスには多彩なセキュリティ装置が多数ついており、とても超えられそうにない。さらに庭園のあちこちにも見えないセキュリティ装置が配置されており、とても屋敷に近づくのは無理そうだった。
「旦那様……、どうしますか?」
 アバドンがひそひそ声で聞いてくる。
「すごい警備体制だ、とてもバレずに屋敷には入れない……」

 すると屋敷から人が出てきた。見ていると、メイドらしき女性が大きな鉄製の門を開け、エレベーターまでやってきた。そして、宙に浮かぶ不思議な台車に荷物を載せ、また、屋敷内へと戻っていく。
「彼女に付いていきましょうか?」
「いや、無理だ。隠ぺい魔法はセキュリティ装置には効かないだろう」
「困りましたね……」
「仕方ない、地中を行こう」
「えっ!?」
 驚くアバドンにニヤッと笑いかけると、俺はナイフで地面を切り裂いた。
「こうするんだよ」
 そう言って地面の切り口を広げて中へと入った。そしてさらに奥を切り裂いて進む。
 地面は壁と同様に、まるでコンニャクのように柔らかく広げることができた。
「さぁ、行くぞ!」
 俺はアバドンも呼んで、一緒に地中を進んだ。一回で五十センチくらい進めるので、百回で五十メートル。無理のない挑戦だ。