自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 警備兵がそう言った瞬間だった。

 ヘックショイ!
 アバドンの盛大なくしゃみがホール中に響いた。
 俺は凄い目をしてアバドンをにらむ。
 固まる警備兵……。
「お前、くしゃみ……した?」
 配達員に聞く。
「いえ? 私じゃないですよ」
 警備兵から異常が報告されてしまうとそこでアウトだ。俺は必死に息を殺し、祈った。
「誰か……、いるのか?」
 警備兵はなめるようにエレベーターの中を見ていく。
 俺は必死に考える。倒してしまうか? いや、もう一人警備兵がいるからダメだ。では釈明……出来る訳がない。まさに絶体絶命である。冷や汗がタラりと流れる。
「ちょっと報告するから待て」
 警備兵がそう言いながら何やら魔道具を取り出す。万事休すだ。

 俺はいきなりのピンチに絶望して気が遠くなった。
 飛び出さねばなるまい、しかし、どのタイミングで……?
 冷や汗がタラリと流れてくる。

 と、その時、

 ボン!

 アバドンが小柄な男に変身して飛び出した。
 この姿は……ヌチ・ギだ!

「お見事! それだよ!」
 そう言いながらアバドンは警備兵の肩を叩いた。
 アバドンの変装は完ぺきで、甲高い声までヌチ・ギそっくりだった。

「ヌ、ヌチ・ギ様……」
「今、屋敷の警備体制を抜き打ちチェックしてるのだよ。君の今の動き、良かったよ!」
 そう言ってアバドンはニッコリと笑いかけた。
「きょ、恐縮です……」
 うれしそうな警備兵。
「君の査定は高くしておこう。抜き打ちなので、他の人には話さないように!」
「は、はい!」
「では、私は屋敷に戻る。引き続き頼んだよ!」
 そう言いながらツカツカとエレベーターに乗り、くるっと振り向いて警備兵ににこやかに笑った。
「では、扉閉めますね」
 警備兵はそう言ってボタンを押した。閉じていく扉……。
 俺はアバドンをジト目でにらむ。
 アバドンはバツが悪そうな様子で頭をかいた。







4-6. 美の狂気

 扉が閉まってしばらくすると、全身が浮き上がるような奇妙な感覚が全身を貫いた。どこかへ転送されたようだ。
 荷物受け取りの人と鉢合わせるとまずいので、俺はナイフを用意してタイミングを計る。

 チーン!
 と、鳴る音と同時に、俺はエレベーターの奥をナイフで切って飛び込んだ。