俺たちは素知らぬ顔で屋敷の玄関を通り過ぎ、衛兵と配達員が話し始めたタイミングで隣家の玄関の金属ドアを素早くナイフで切って中に忍び込んだ。
玄関はホールになっており、左右に廊下が続いている。俺たちはヌチ・ギの屋敷側へと早足で進む。すると、ガチャッと前の方でドアが開き、メイドが出てきた。
大ピンチではあるが、命すら惜しくない奪還計画においてこの手の障害はむしろ楽しくすら感じる。
俺は何食わぬ顔で、
「ご苦労様です!」
そう言ってニコッと笑った。
メイドは怪訝そうな顔をしながら会釈する。
廊下の突き当りまでくると、俺は壁をナイフで素早く切り、アバドンとすぐに潜り込む。後ろの方で悲鳴が聞こえたが気にせずに進んでいく。
壁の向こうはもうヌチ・ギの屋敷で、薄暗いガランとした部屋だった。ほこりをかぶった椅子や箱が並んでおり、長く使われていない様子である。
ドアの方へ近づくと声がしてくる。どうやら警備兵と配達員らしい。俺はナイフでドアに切れ目を入れ、そっと開いて向こうをのぞいた。
ドアの向こうはエレベーターホールのようになっており、配達員が世間話をしながら大きなエレベーターのような装置に台車の荷物を載せている所だった。鑑定をしてみると、このエレベーターは『空間転移装置』つまり本当の屋敷への転送装置という事らしい。
「あと一個です」
そう言って配達員が台車を押して玄関へと移動し、警備兵も後をついて行った。
俺たちはアバドンに隠ぺい魔法をかけてもらって、部屋を抜け出し、エレベーターの奥に座って息を殺した。
戻ってきた警備兵が最後のひと箱を積む。目の前でドサッと乗せられた箱からほこりが舞った。
俺は不覚にもほこりを吸い込んでしまい、咳が出そうになる。
「これで完了です」
配達員が言う。
俺は真っ赤になりながら咳をこらえる。
隠ぺい魔法は、光学迷彩のように姿は消せるが音は筒抜けである。咳などしようものならバレてしまう。
そして、バレたらもうドロシーの奪還どころか俺たちの命はない。ヌチ・ギは万能の権能を持つ男。俺たちが奪還に動いていることを知ったら、権能を使って探し出し、確実に俺たちを殺すだろう。だから絶対にバレてはならなかった。
俺はこみ上げてくる咳の衝動を必死に抑え込み、扉が閉まるのを待った。
「じゃぁ閉めるぞ」
玄関はホールになっており、左右に廊下が続いている。俺たちはヌチ・ギの屋敷側へと早足で進む。すると、ガチャッと前の方でドアが開き、メイドが出てきた。
大ピンチではあるが、命すら惜しくない奪還計画においてこの手の障害はむしろ楽しくすら感じる。
俺は何食わぬ顔で、
「ご苦労様です!」
そう言ってニコッと笑った。
メイドは怪訝そうな顔をしながら会釈する。
廊下の突き当りまでくると、俺は壁をナイフで素早く切り、アバドンとすぐに潜り込む。後ろの方で悲鳴が聞こえたが気にせずに進んでいく。
壁の向こうはもうヌチ・ギの屋敷で、薄暗いガランとした部屋だった。ほこりをかぶった椅子や箱が並んでおり、長く使われていない様子である。
ドアの方へ近づくと声がしてくる。どうやら警備兵と配達員らしい。俺はナイフでドアに切れ目を入れ、そっと開いて向こうをのぞいた。
ドアの向こうはエレベーターホールのようになっており、配達員が世間話をしながら大きなエレベーターのような装置に台車の荷物を載せている所だった。鑑定をしてみると、このエレベーターは『空間転移装置』つまり本当の屋敷への転送装置という事らしい。
「あと一個です」
そう言って配達員が台車を押して玄関へと移動し、警備兵も後をついて行った。
俺たちはアバドンに隠ぺい魔法をかけてもらって、部屋を抜け出し、エレベーターの奥に座って息を殺した。
戻ってきた警備兵が最後のひと箱を積む。目の前でドサッと乗せられた箱からほこりが舞った。
俺は不覚にもほこりを吸い込んでしまい、咳が出そうになる。
「これで完了です」
配達員が言う。
俺は真っ赤になりながら咳をこらえる。
隠ぺい魔法は、光学迷彩のように姿は消せるが音は筒抜けである。咳などしようものならバレてしまう。
そして、バレたらもうドロシーの奪還どころか俺たちの命はない。ヌチ・ギは万能の権能を持つ男。俺たちが奪還に動いていることを知ったら、権能を使って探し出し、確実に俺たちを殺すだろう。だから絶対にバレてはならなかった。
俺はこみ上げてくる咳の衝動を必死に抑え込み、扉が閉まるのを待った。
「じゃぁ閉めるぞ」



