自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 自由になった魔人が、まさか何のメリットもない命がけのドロシー奪還を提案するとは……。それは、全くの想定外だった。俺は唖然(あぜん)としてアバドンを見つめた。
「手伝うのか? 手伝わないのか?」
 アバドンはニヤッと笑って言う。
「アバドーン!!」
 俺は思わずアバドンに抱き着く。男くさい筋肉質のアバドンの温かさが心から嬉しかった。
「グフフフ……、(あね)さんは私にとっても大切な方……、旦那様、行きましょう」
 俺は一筋の光明が見えた気がしてオイオイと泣いた。










4-4. 決死の奪還作戦

 俺たちは部屋に入り、作戦を練る。
 しかし、ドロシー奪還計画はそう簡単には決まらない。何しろ相手は無制限の権能を持つ男。普通に近づいたら瞬殺されて終わりだ。だから『見つからないこと』は徹底しないとならない。見つかった時点で計画失敗なのだ。
 アバドンによるとヌチ・ギの屋敷は王都の高級住宅地にあって小さなものらしい。しかし、今までに連れ込まれた女の子の数は何百人にものぼる。到底入りきらない。つまり、屋敷は単なる玄関にすぎず、本体はどこか別の空間にあると考えた方が自然だ。そんなところに忍び込む……、あまりの難易度の高さに考えるだけでクラクラする。
 しかし、今この瞬間もドロシーは俺の助けを待っている。『命がけで守る』と言い切ったのだ、たとえ死のうとも助けに行くことは決めている。
 幸い俺にはレヴィアからもらったバタフライナイフがある。これで壁をすり抜けて忍び込み、何とか屋敷本体へのアプローチの方法を探そう。
 そして、忍び込んだら見つからないように秘かにドロシーを救出し、連れ出す……。出来るのかそんなこと……。
 俺は無理筋の綱渡りの計画に胃が痛くなり、思わずうなだれてしまう。
「旦那様、あきらめるんですか?」
 アバドンは淡々という。
 どう考えてもうまくいくとは思えない。成功確率なんて良くて数パーセント……。
 でも……、成功の可能性がほんの少しでもあるのならやるのだ。上手くいきそうかどうかなんてどうでもいい、成功のために全力を尽くす。ただ前だけ向いて突き進むのだ。俺は覚悟を決める。
「いや、どんなに困難でも俺は行くよ」
 俺は顔を上げ、しっかりとした目でアバドンを見た。
「グフフフ、成功させましょう」