自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「バーカ、お前はあのお方を分かってない。地球人の口添えになど何の意味もない。それに……、余計な事をしてこの世界ごと消去されたら……お前、責任とれるのか?」
 ヌチ・ギはゾッとするような冷たい目で俺を見る。
 レヴィアもヌチ・ギも美奈先輩を異様に恐れている。大学のサークルで一緒に楽しくダンスしていた俺からしたら、なぜそこまで恐れるのか理解ができなかった。確かにちょっと気の強いところがあったが、気さくで楽しくて美人で人気者のサークルの姫、そんな人が世界を容赦なく滅ぼす大魔王だなんて、全然実感がわかない。
「ヴィーナ様は俺が説得してみせる!」
 俺はそう叫んだ。しかし……、
「この世界の存続を願うなら、余計な事は慎みたまえ」
 ヌチ・ギはそう言って空間を割き、切れ目を広げた。
「ま、待ってくれ! 妻は、妻は許してくれ!」
 俺は必死に頼む。
「こんな上玉、手放すわけがないだろ」
 ヌチ・ギはそう言っていやらしい笑みを浮かべると、ドロシーの柔らかい肌を揉んだ。
「いやぁぁぁ!」
 泣き叫ぶドロシー。
「たっぷり可愛がった後、美しく飾ってやる」
 そう言って、ヌチ・ギはドロシーの腕をつかむと無造作に空間の切れ目に放り込んだ。
 俺は叫ぶ。
「お前! ふざけんな! ドロシーに触れていいのは俺だけだ!」
 ヌチ・ギは勝ち誇った顔で、
「余計な事したら真っ先にこの女から殺す。分かったな?」
 そう言い放つと、切れ目の中へと入っていった。
「止めろ――――!」
 必死の叫びもむなしく、空間の切れ目がツーっと閉じていく。
「助けて! あなたぁ!」
 ドロシーの悲痛な叫び声がプツッと無慈悲に途切れた。

「ドロシー! うわぁぁぁ! ドロシー――――!!」
 俺の泣き叫ぶ声が朝もやの池にむなしく響き続けた……。






4-3. ドロシーの残り香

 最愛の妻が奪われてしまった。
 だから結婚なんかしちゃダメだったんだ……。
「うぉぉぉぉ」
 慟哭(どうこく)が喉を引き裂く。金縛りの解けた俺は狂ったかのように泣き叫んだ。
 無様な泣き声が森に響き渡る……。
 俺は毛布を拾うと、ぎゅっと抱きしめた。まだ温かい毛布にはドロシーの匂いが残り、俺を包む。
「ドロシー……。うぅぅぅぅ……」
 俺はドロシーの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

 御嶽山に朝日が当たり、オレンジ色に輝くのが見える。