自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

第二部 そして深淵へ
4章 引き裂かれた未来

4-1. 初めての夜

 お姫様抱っこのまま夕焼け空を飛び、新居についた頃には御嶽山の山肌も色を失い、宵闇(よいやみ)が迫ってきていた。
「奥様、こちらがスイートホームですよ!」
 俺はそう言いながら木製のデッキにそっと着地した。
「うわぁ! すごい、すごーい!」
 ドロシーはそう言いながら目を輝かせてログハウスをあちこち眺め、そして、池の向こうの御嶽山を見つめ、大きく両手をあげて、
「素敵~!」
 と、うれしそうに叫んだ。
 一人で閉じこもるつもりだった小さなログハウスは、二人の愛の巣になり、俺の目にも輝いて見えた。

 俺はドアを開け、
「ごめんね、まだ何もないんだ」
 と、言いながらベッドとテーブルしかない殺風景な部屋にドロシーを招き、暖炉に魔法で火をともした。
「本当に何もないのね……。私が素敵なお部屋に仕立てちゃってもいい?」
 ドロシーはそう言って、薄暗い部屋を見回す。
「もちろん! じゃあ、明日は遠くの街の雑貨屋へ行こう」
 俺はドロシーの手を取って引き寄せ、つぶらなブラウンの瞳を見つめた。
 そして、暖炉の炎に揺れる美しい(ほほ)のラインをそっとなでる。

 こんなに可愛い娘が俺の奥さんになってくれた……。それは俺にとってまだ信じられないことだった。前世ではあれほどあがいたのに彼女もできなかったことを考えると、まるで夢のようである。
「どうしたの?」
 ドロシーは優しく聞いてくる。
「こんなに可愛いくて優しい娘が奥さんだなんて、本当にいいのかなって……」
「ふふっ、本当言うとね……、昔倉庫で助けてくれたじゃない……。あの時からこうなりたかったの……」
 そう言って、真っ赤になってうつむくドロシー。
「えっ? あの時から好きでいてくれたの?」
「そうよ! この鈍感さん!」
 ジト目で俺をにらむドロシー。
「あ、そ、そうだったんだ……」
「こう見えても、たくさんの人から言い寄られてたんだからね」
 ちょっとすねて言う。
「そうだよね、ドロシーは僕たちのアイドルだもの……」
「ふふっ、でもまだ、純潔ピッカピカよ」
 ドロシーは嬉しそうに笑う。
「それは……、俺のために?」
「あなたにも守られたし……、私もずっと守ってきたわ……、今日のために……」

 見つめ合う二人……。

 ポンッ!