自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「はい、では、誓いのキスよぉ~!」
 院長が嬉しそうに言う。

 俺は照れながらドロシーに近づく。ドロシーは静かに上を向いて目をつぶった。
 まるでイチゴみたいなプリッとした鮮やかなくちびる……。俺はそっとくちびるを重ねた。
 柔らかく温かなくちびる……。この瞬間俺たちは正式に夫婦となったのだ。

「おめでとうございまーす!」
 アバドンがパチパチと手を叩きながら祝福してくれる。
「おめでとう、これであなたたちは立派な夫婦よ」
 院長は感慨深げに言った。

 と、その時だった、ドカッと入り口のドアが乱暴に開いた。
「いたぞ! あの男だ!」
 王国軍の兵士たちがもう()ぎつけてやってきてしまった。
 院長は、
「何だお前たちは! ここは神聖なるチャペルよ! 誰の許可を得て入ってきてるの!?」
 と、すごい剣幕で叫んだ。
 俺は裏口から逃げようとドロシーの手を取ったが、アバドンが先に裏口に走って、
「ダメです! 裏口にも来ています」
 と、叫びながら裏口のノブを押さえた。

「その男はおたずね者だ! かばうなら重罪だぞ!」
 兵士長が院長に喚く。
「教会は法王の管轄、王国軍といえども捜査には令状が必要よ! 令状を見せなさい!」
 兵士長は、
「構わん! ひっとらえろ!」
 と、兵士たちに指示を出す。俺たちに向け駆け出す兵士たち。
「なめんじゃないわよ! ホーリーシールド!」
 院長はチャペルいっぱいに光の壁を作り出す。兵士たちは壁に阻まれ動けない。
 驚いた兵士長は聞いてくる。
「あなたはもしや……『闇を打ち払いし者・マリー』?」
「あら、よく知ってるじゃない。あんたらが束になっても私には勝てないわよ!」
 吠える院長。
「いや、しかし、あの男はおたずね者で……」
「そんなの知らないわよ! 教会内で捜査するなら令状を持ってきなさい!」

 そんなやり取りを聞きながら、俺は逃げ出す算段を必死に考える。壁を壊してもステンドグラスをぶち抜いてもいいんだが、この神聖なチャペルを壊すのは気が引ける。どうしたものか……。
 と、ここでバタフライナイフを思い出した。
 俺は手提げカバンからナイフを取り出すとツーっと壁を切った。コンニャクのようにベロンと切り口を見せる白い壁。俺は切り口を広げるとドロシーを通し、おれも壁をくぐる。