自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「はっはっは、すごいわね。人族最強をあっさりとぶちのめすって、あなたどんだけ強いのよ」
「人間にはもう負けませんね。でもこの世は強いだけではどうしようもないことの方が多いです」
「うんうん、そうよね。で、これからどうするの?」
「お話した通り、しばらくは山奥に移住します」
 院長はうなずくと、優しく静かに言った。
「ドロシーがね……、ついていきたいんだって」
 ドロシーが静かに俺の手に手を重ねた。
 俺はドキッとする。久しぶりに触れたドロシーの肌は心にしみる柔らかさをもっていた。
 しかし、危険に遭わせるわけにはいかない。
「連れていきたいのはやまやまですが……、とても危険です。俺には守り切る自信がありません」
 ドロシーがキュッと俺の手を強く握る。
 重い沈黙の時間が流れる……。
 ヌチ・ギは不気味だし、王国軍だってバカじゃない。逃避行に女の子なんて連れていけない。
 ドロシーが小さな声で言った。
「ねぇ、ユータ……。あの時、私のことを『一番大切』って言ってくれたのは……本当……なの?」
「もちろん、本当だよ。でも、大切だからこそ危険には()わせられない」
 俺はドロシーの手を取り、両手で優しく包む。
「やだ……」
 そう言ってドロシーはポトリと涙を落した。
「ドロシー……、分かってくれ。俺についてきたらいつかまたひどい目に遭う。殺されるかもしれないよ」
「構わない……」
「か、構わない? そんなことあるかよ! 本当に、比ゆなんかじゃなく、殺されるんだぞ!」
「殺されたっていいわ! このまま別れる方が私にとっては地獄だわ」
 そう言ってドロシーは涙いっぱいの目で俺を見た。
「ドロシー……」
 『殺されても構わない』と言われてしまうと、もう俺には返す言葉がなかった。
「ユータのいないこの一か月、地獄だったわ。コーヒーいれても自分しか飲む人がいないの。笑い合う人もいないし、一緒に夢を語る人もいない……。私もう、こんな生活耐えられない!」
 そう言ってドロシーがしがみついてきた。
 懐かしい温かく柔らかい香りにふわっと包まれる。
「ドロシー……」
 俺は小刻みに震えるドロシーの頭を優しくなでた。
「俺だって一緒だったよ。ドロシーがいない生活なんてまるで色を失った世界だったよ」
「ならつれてってよぉぉぉ!! うわぁぁぁん!」