自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「今日は楽しかったぞ。お礼にこれをプレゼントするのじゃ」
「え? ナイフ……ですか?」
「これはただのナイフじゃない、アーティファクトじゃ」
 そう言うと、レヴィアは器用にバタフライナイフをクルリと回して刃を出し、柄のロックをパチリとかけた。するとナイフはぼうっと青白い光をおび、ただものでない雰囲気を漂わせる。
「これをな、こうするのじゃ」
 レヴィアはエールの樽をナイフで切り裂く。すると、空間に裂け目が走った。その裂け目をレヴィアはまるでコンニャクのように両手でグニュッと広げる。開いた空間の切れ目からは樽の内側の断面図が見えてしまっている。エールがなみなみと入ってゆらゆらと揺れるのが見える。しかし、切れ目に漏れてくることもない。淡々と空間だけが切り裂かれていた。
「うわぁ……」
 俺はその見たこともない光景に()きつけられた。
「空間を切って広げられるのじゃ。断面を観察してもヨシ、壁をすり抜けてもヨシの優れモノじゃ」
「え? こんな貴重なもの頂いちゃっていいんですか?」
「お主はなぁ……、これから多難そうなんでな。ちょっとした応援じゃ」
 レヴィアはそう言ってナイフを畳むと俺に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
 うやうやしく受け取ると、レヴィアはニッコリと笑い、俺の肩をポンポンと叩いた。
「じゃ、元気での!」
 レヴィアは俺に軽く手を振りながら、空間の裂け目に入っていった。
「お疲れ様でした!」
 俺はそう言って頭を下げる。
「今晩はのぞかんから、あの娘とまぐわうなら今晩が良いぞ、キャハッ!」
 最後に余計なことを言うレヴィア。
「まぐわいません! のぞかないでください!」
 俺が真っ赤になって怒ると、
「冗談のわからん奴じゃ、おやすみ」
 と、言って、空間の裂け目はツーっと消えていった。
 俺は試しにバタフライナイフを開いてその辺を切ってみた。確かにこれは凄い。壁を切れば壁の向こうへ行けるし、腕を切れば腕の断面が見える。そして、切るのはあくまでも空間なので、腕もつながったままだ。単に断面が見えるだけなのだ。そして放っておくと自然と切れ目は消えていく。なんとも不思議なアーティファクト、この世界が仮想現実空間である証拠と言えるかもしれない。