すぐ後ろから迫るゴブリン。距離はドンドン縮まっている。ヤバい!

 最後の急坂を全速力で駆け下り、街道に出る。すると遠くに男の人がいるのを見つけた。俺は大声で叫びながら駆ける。

「助けて――――!!」

 ゴブリンもすぐ街道まで下りてくると、一匹が俺をめがけて槍を投げてきた。
 槍はシュッと空気を切り裂き、激痛が俺の脇腹を貫く。
「ぐわぁぁ!」

 俺はもんどりうって転がった。
 槍は少しそれていたおかげで、わき腹を少しえぐっただけにとどまり、その辺にカラカラといって転がる。
「ウキャ――――!!」
 もう一匹のゴブリンは転がった俺をめがけてジャンプし、短剣を振り下ろしながら降りてくる。
 ゼーゼーと荒い息を吐きながら無様に転がる俺にはもう(あらが)うすべがない。もうダメだ!
 俺は腕で顔を覆った……。

 次の瞬間、
「ギャウッ!」
 といううめき声と共に、ゴブリンが俺の隣に落ち、汚い血をまき散らした。

「え!?」
 見ると、ゴブリンの額には短剣が刺さっていた。
「おーい、大丈夫か?」
 遠くから冒険者らしき男性が駆けてくる。
 彼が助けてくれたようだ。
「だ、大丈夫……ですぅ……」
 俺は安堵(あんど)で全身の力が抜け、フワフワとする気分の中、答えた。
 九死に一生を得た。
 殺されたゴブリンは霧のようになって消え、エメラルド色に輝く緑の魔石が残った。
 俺は魔石を初めて見た。そうか、こうやって魔物は魔石になるんだな。

 槍を投げたゴブリンは、冒険者の登場にビビって逃げ始める。
 男性は逃がすまいと、転がった槍を拾い、ダッシュで追いかける。

 俺は自分のステータスウィンドウを開き、状況をチェックした。

HP 5/10

 と、HPが半減している。もう一撃で死ぬらしい。ヤバかった。
 すると、次の瞬間、

 ピロローン!
 と、頭の中で効果音が鳴り響き、いきなりレベルが上がった。

ユータ 時空を超えし者
商人 レベル2

「はぁ?」
 俺は何もやってない。やってないのになぜレベルが上がるのか?
 見ると、遠くで男性が槍でゴブリンを倒していた。