就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

「警備隊は何やってんのよ!? えっ? 強硬突破? こっちにはシャトルしかないわよ! ……。分かった。コードを送るからやってみて。うん……、うん……」
 通話が終わるとミネルバは頭を抱えた。
「ど、どうしたんですか?」
「貨物船がここに突っ込んでくるわ」
「えぇ!? そんなの、ジグラートは耐えられるんですか?」
「耐えられるわけないじゃない。外壁を破壊されたら氷点下二百度の高圧ガスが一気になだれ込んできてサーバー群は全滅だわ」
「えっ? サーバー群全滅ってことは……」
「うちの星は消えるわ……」
 ミネルバはガックリとうなだれる。
「マリアンがやってるんですか?」
「多分そうじゃないかしら? 私たちが海王星へ来たのを知って証拠隠滅を図ったんだわ」
「証拠隠滅のために星ごと滅ぼすんですか!?」
「サーバーハックは重罪。星を滅ぼしてでも逃げたいんでしょうね。あー、私に対する恨み……かもしれないけど……」
「狂ってる……」
「今、魔王がシャトルを遠隔操作して、貨物船に体当たりをさせているわ。何とか針路をそらせたらいいんだけど……」
 ミネルバはそう言って、シャトルからの動画を俺にシェアした。
 動画を開くと、雪が舞い散る風景と、レーダーの画像が見えた。レーダーには巨大な貨物船が迫ってきている様子が映っていた。
「シャトルぶつけたら何とかなるんですか?」
「貨物船の全長が四百メートル、シャトルの全長は十五メートル。どうかしらね……」
 ミネルバは渋い顔で淡々と言う。
「厳しい……感じが……」
 俺はちょっと気が遠くなった。
「魔王の操縦に期待するしかないわ。私たちにもできることをやりましょう。えーと、粘着ゴム弾……。ついてきて!」
 ミネルバはそう言って駆けだした。














3-21. エステルの決断

 しばらく行くと小さな倉庫のようなところがあった。ミネルバは扉を開け、中から大きな筒を出してきて俺に渡した。

「はい、粘着ゴム銃よ」
「え? 何に使うんですか?」
「これは外壁に亀裂が入った時に応急処置するためのゴム銃なの。撃つとゴムが広がってビチャッと引っ付くのよ」
「衝突して裂けた外壁に撃つんですか?」
「まぁ……、気休め程度だとは思うわ……」
 ミネルバは渋い顔をして、ヒゲもだらんと下がった。
 俺たちは衝突予定箇所へと急ぐ。