就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

 ミネルバはプリプリしながら金属の廊下をカッカッと歩いて行く。
 急いで追いかけると巨大な窓が見えてきて、外は真っ暗だった。ふと、窓から下を眺めて驚いた。なんとそこには巨大な(あお)い惑星が眼下に広がっていたのだ。
「うわぁ!」
 そのどこまでも澄みとおる青、圧倒的な巨大さに俺は圧倒された。
 ミネルバはニヤッと笑い、
「ようこそ海王星へ!」
 と、言った。
 窓に張り付いて見ると、まっすぐに立ち上る天の川に、クロスするように巨大な環が十万キロくらいのアーチを形作っていた。大いなる宇宙の芸術に俺は思わずため息を漏らす。
「はい! 行くわよ!」
 ミネルバはカッカッと先を急ぎ、
「あー、待ってください!」
 と、俺は追いかける。
 俺たちが転送されたのは海王星の衛星軌道上の宇宙港(スカイポート)。直径数キロメートルの巨大な観覧車のような環状の構造物だ。ここから海王星の内部に設置されたコンピューターへとシャトルで向かうらしい。
 無重力の船着き場から六人乗りの小さなシャトルに乗ると、自動的にハッチが閉まり、エンジンがかかって、ゆっくりと加速し始めた。
「なんでこんなところにサーバーがあるんですか?」
「冷たいからじゃないかしら? 氷点下二百度らしいわよ」
「マイナス二百度!?」
 俺は思わずブルっと体が震えた。全ての物が一瞬で凍り付く温度、そんなところへこれから行くらしいが……大丈夫なんだろうか……。

 シャトルはどんどんと高度を落とし、徐々に真っ青な海王星が視野いっぱいに迫ってくる。そして、大気圏突入。シャトルは真っ赤になりながらさらに高度を落としていく。
「なんだかすごいですね! まるでSFですよ!」
 俺が興奮していると、
「これが仮想現実空間だと言ったら信じる?」
 と、ミネルバはニヤッと笑って言った。
「えっ!? 仮想現実空間というのはこれから向かうコンピューターが作ってるものですよね? なぜここも仮想現実空間なんですか?」
 俺は困惑して言った。
「ふふっ。今度女神様に聞いてみるといいわ」
 ミネルバはそう言って、うれしそうに笑った。
 60万年かけて作ったという海王星のサーバー群。それがある世界が仮想現実空間? 俺は彼女が何を言ってるのかわからなかった。