就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

 やはり……、俺は目の前が真っ暗になった。エステルは人間ではなかったのだ。優しく献身的でいつまでも子供な存在……、それは作られた新人類(ネオエンジェル)だった……。
「ソ、ソータ様、ち、違うの!」
 エステルが俺にしがみつき、涙目で訴える。
 俺はエステルを蒼白の顔でジッと見下ろした。なんて言ったらいいのか俺は完全に言葉を失ってしまった。
 なるほど、確かに世界中エステルみたいな人だらけになったら、争い事も揉め事もなくなってしまうだろう。それは一つ真理を突いてるなと思った。思ったが……、そんな社会など価値があるんだろうか? 毎日三食スイーツしか食べないような社会って感じがして非常に抵抗を感じる。

「そんな社会、発展などしないわ。それに大量虐殺は違法。直ちにお前を拘束する!」
 ミネルバはそう叫ぶと全身を光らせて、
「ホーリーバインド!」
 と、叫んだ。放たれた光のロープがマリアンをグルグル巻きにしていく。
 しかし、余裕の笑みを浮かべるマリアン。
 直後、ハッ! とマリアンが叫ぶと光のロープは飛び散って霧散し、逆に新たに生成されたロープであっという間にミネルバと魔王と俺をそれぞれしばった。
「うわぁ!」「な、なぜだ!」「ぐわぁ!」
 いきなり縛られ、バランスを崩し、尻もちをつく俺。

「ふふっ、あなた達の権能はすべて奪ったわ。事故死として処理しておくわね。さようなら」
 マリアンはうれしそうにそう言うと、腕をデカい窓ガラスに向けて振って光を放ち、窓ガラスを全部粉々に砕いた。そして、
「六十一号、行くわよ!」
 そう言ってエステルの腕をつかむと、窓の外へと飛んだ。
「エステル!」
 身動き取れない俺が叫ぶと、
「いやぁぁぁ! ソータ様ぁ!」
 悲痛な叫びが遠ざかっていく。

「ヤバい! 逃げないと! あいつ撃ってくるわ!」
 ミネルバが叫んだ。
「ダメだ、能力が全部ロックされてる!」
 魔王は青くなって言った。

 俺は足で鏡を蹴り倒すと、
「ここに逃げてください!」
 そう叫んで鏡に飛び込んだ。