就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

 マリアンは余裕の表情でミネルバを見つめる。
「あなたの行為は海王治安法第32条に違反する重大な犯罪よ。なぜ、こんなことやったのよ!」
 怒るミネルバ。
「ふんっ! あんたらのやり方が生ぬるくて見てらんなかったのよ。あなた、最近成果全くないじゃない。このままじゃこの星、消去処分よ? どうすんの?」
「ど、どうすんのって、地道に改善策を話し合ってきたじゃない。何を今さら」
 マリアンは肩をすくめて言った。
「あなた、人間という物を分かっていないわ。人間は欲望の生き物。金と権力にとりつかれた亡者なの。結果オッサンたちが利権を独占し、ガチガチな社会を作り上げた……。この星の若者見てみなさいよ、みんな老害たちに翼をもがれて苦しんでるわ」
「社会の安定のためには……」
「何が安定よ! 老人が何もせずに大金をせしめる社会が安定した社会? ふざけんじゃないわよ!」
「それは貴族制の問題だから……」
「違う! 全然違うわ! その男の故郷、日本を見てみるといいわ。貴族なんていないのに老害がガチガチの利権社会を作って若者を潰してるわ。日本では大企業が貴族の代わりをしているのよ。要はシステムの問題じゃないの、人間の(ごう)の問題だわ」
 俺は反論しようとしたが……、大企業に入ろうと必死に就活を繰り返してた俺には否定できなかった。

「なら、どうするのよ?」
 ミネルバが言った。
「欲望に縛られない新人類(ネオエンジェル)に入れ替えるのよ。人を騙さない、嫉妬しない、損得勘定しない、独り占めしない、そういうオープンな感性を持った、いつまでも歳をとらないフレッシュな若者……、彼らに入れ替え、理想郷(フェアリーランド)を作るの」
 マリアンはうれしそうに微笑んだ。
 新人類(ネオエンジェル)? まさか……、もしかして……、俺はエステルを見た。エステルは俺の視線を感じると、ビクッとなって縮こまってしまった。
「そんな社会上手くいくわけないわ!」
 ミネルバが叫ぶ。
「ソータ君……だっけ? あなた、新人類(ネオエンジェル)と一緒にいたんでしょ? どうだったのよ?」
 マリアンはニヤッと笑って聞いてくる。
「エ、エステルの事か?」
 俺は青い顔をして聞いた。
「名前なんて知らないわ、そこの娘、六十一号のことよ」