就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

 俺は絶句した。そりゃそうだよ。富岳一兆個分のコンピューターなんて百年や二百年じゃ作れっこないのだ。それにコンピューターは電気をものすごく食う。電源も用意しなくてはならない。途方もない時間かかるのは仕方ないだろう。
 太陽系ができてから46億年と聞いたことがある。よく考えれば60万年といっても太陽系の歴史に比べたら一瞬だ。俺は宇宙の壮大なスケールと海王星人の執念に思わずため息をついた。
「この世界が仮想現実だと何か不都合でもあるのかい?」
 魔王は淡々と聞いてくる。
「不都合?」
 俺は悩んでしまった。21年のこの人生の中でリアルじゃなくて困った事……。何も思いつかなかった。しかし、俺はコンピューター上のデータ。データに価値なんてあるのだろうか?
「私が電子的存在だったとしたら、私って何なんでしょう? ゲームのキャラクター?」
「自分が何者かはコンピューターが定義するものではない。『我思う故に我あり』、実装環境が何であろうと、『思い』は宇宙に一つだけの珠玉の宝石であり、アイデンティティだ」
 魔王は優しい目で言う。
「思うことそのものに価値があるってことですか?」
「そう、思いは神聖にして不可侵な君の世界だ。また同時に、君の思いは他の人の思いと有機的な関係を築きながらオリジナルな世界を紡ぎだす。そしてその思いの集合の結果生まれる文化・文明が海王星人の求めるものなのだよ」
 なるほど、高度に発達した科学力を持つ海王星人たちにとってもオリジナルな文化・文明を簡単に合成はできないってことだろう。そこで俺たちを生み出し、紡ぎださせている。それは大変に非効率かつ冗長に見えるけれども、それ以外方法が無いということなのだ。俺は生まれて初めてこの宇宙の(ことわり)に触れ、感慨深く思った。

「おっといけない! ミネルバ様に連絡しないと……」
 そう言って魔王はiPhoneで電話をかけた。
 ここまで文明が発達してるのになぜiPhoneなのかはちょっと疑問だった。

 緊急会議が開かれるとの事で、ミネルバの拠点へ行くことになった。
 魔王は空中に指先で大きな円を描くと、大きなドアがポンっと現れた。
 そして、魔王はドアをノックする。
「どうぞー」
 若い女性の声がして、魔王は中へ入り、俺たちを呼んだ。







3-13. 猫の人