就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

「太陽系で一番寒い所だからじゃないかな? 熱はコンピューターシステムにとって最大の敵だからね」
「ここが仮想現実空間だというのは理解しました。でも、なぜ、iPhoneがそのまま動くんですか?」
「え? だって日本だって同じシステムで動いてるからね。iPhoneも仮想現実のデータだよ?」
 俺は絶句した。











3-12. 六十万年の壮大な計画

 やはりそうか……。俺は仮想現実空間に生まれ、二十一年間生きてきていたのだ。つまり、俺はゲームのキャラクターみたいな存在だった……。でも、日本は科学が発達している。288Hzだったら矛盾が観測されているはずだ。
「いやいや、日本には高速度カメラだって、素粒子の加速器だって、288Hzでは矛盾が出る装置なんていくらだってあるじゃないですか!」
「ん? そこだけシステムが検知して自動で周波数上げてるんだよ」
 魔王は当たり前のようにニッコリと笑って言う。
「え? 本当に? でも、時間だけじゃない、量子効果だってコンピューターでは再現できないはずですよ?」
「量子って結局確率の話だからね。コンピューターで再現するのはそんなに難しくないよ。量子コンピューターには量子コンピューターそのまま当てはめてやるだけだし」
「え……?」
 俺は必死に仮想現実空間では不可能な理由を探した。しかし、いくら考えても矛盾は見つからない。確かに原理的にはコンピューターの規模さえ整えば実現可能だった。
「君たちの使ってるパソコンの計算速度がだいたい秒間で5x10の11乗回、日本ご自慢のスパコン富岳で4x10の17乗回。そして、海王星にあるIDCのコンピューターは5x10の29乗回。富岳の1兆個分だね。まぁ、ちょっと想像を絶する規模だよ」
 俺は愕然(がくぜん)とした。富岳が一兆個もあれば、それは確かにできてしまうかもしれない。人間一人動かすのに富岳10台分だ。ソフトの組み方次第でできないことは無いかも……。しかし……。
「そんな膨大なシステム、誰が何の目的で作ったんですか?」
「多様性のある文化・文明が欲しくて、海王星人が60万年かけて作ったって聞いたな……」
 魔王は宙を見ながら答える。
「60万年!?」