と、ここで、あの魔物が落とした光る石を思い出した。俺はポケットから石を出して聞いた。
「これ? 何かに使えるの?」
「魔石はギルドで買い取ってもらえるですよ! これだけあれば銀貨三枚くらいですね」
 銀貨の価値が良く分からないが、魔物を倒すと金になる……、これはもしかしてチャンスなのでは?
「え? じゃ、もしかして、強い魔物を倒したらもっとお金になるの?」
「そうです。金貨何十枚にもなる魔物もいるです!」
 エステルは嬉しそうに言う。
「金貨!?」
 俺は驚いた。もし、そんな魔物も殺虫剤で瞬殺なら、金儲けになるのではないだろうか? 金貨一枚を日本で五万円で買い取ってもらえるとしたら魔物一体で……、百万円!? え!?
 俺は皮算用をして仰天した。救世主的な事は全く興味なかったが、金になるのであれば話は全然変わる。金貨をじゃんじゃん稼いでこっちで換金できたら俺、就活しなくていいのではないだろうか? サラリーマンなんかよりも、圧倒的に稼げる道を見つけてしまったかもしれない。
 ここでようやく先輩の言った意味が分かった。日本でダメなら異世界で稼げばいいのだ!
 俺は思わずこぶしを握った。が、先輩はなぜそんなことを知っていたのだろう? 今度会ったら聞かねばと思った。

       ◇

 俺がそんなことを考え、一人で盛り上がっていると、エステルがうつらうつらしている。ダンジョンでひどい目に遭って疲れたのだろう。

「はい、じゃ、ここで横になってね」
 俺は優しくエステルをベッドに寝かせた。

 すぐに寝入っていったエステルの綺麗にカールしたまつげを、俺はボーっと見る。女っ気の全くなかった俺の部屋で、透き通るような白い肌の美少女がすやすやと寝ている。一体これはどう理解したらいいものかちょっと戸惑った。
 異世界、美少女、そして金貨。就活地獄の中にいきなり現れたこの僥倖(ぎょうこう)を何とかモノにしてやろうと俺は野望に燃えた。









1-6. 物干しざおの戦士

 ホームセンターへ行っていろんなタイプの殺虫剤、防刃ベストにヘルメットを選ぶ。そして、最後に武器になりそうなものを探した。