いや待て! そんな馬鹿な事があるか? 日本が三百分の一秒ごとに像が生成される世界だったらさすがに誰かが気づくだろう。高速度撮影カメラは幾らだってあるし、いろんな観測装置があるんだから……。
俺は頭が混乱した。俺の生きてる世界ってどうなっているんだ? 素粒子が波で作り上げてるって話じゃなかったのかよ? 科学者何やってんだよ!
その後もいろいろ考えてみたが、結論は出なかった。ただ、手を揺らせばいつまでも残像はギザギザのまま。この世界は仮想現実空間、それだけは間違いなかった。
その晩、俺はなかなか寝付けなかった。
◇
「ソータ様! 朝ですぅ! 起きるですぅ!」
耳元で大声を出された。
「う? もうちょっと……」
俺は毛布に潜り込む。
「ダメですよぉ! 食堂しまっちゃうですぅ!」
エステルは毛布を引っ張る。
「寝かせてよぉ!」
俺はグンっと毛布を引っ張り返した。
「きゃぁ!」
エステルが俺の上に倒れ込む。
「うわぁ!」
重なる二人……。柔らかい重みが俺を押しつぶす。
この重みも仮想現実? 俺は寝ぼけながらボーっと感じていた。
「起きるです……」
エステルが耳元でボソっという。
俺はエステルの優しい香りを胸いっぱい吸い込みながら考えた。
仮想現実かどうかなんて、どうでもいいのかもしれないな……。仮想現実でもなんでも幸せになれば勝ちなのだから。
3-10. 魔王の悩み
「ゴメン、起きるから先行ってて」
そう言ってエステルを優しくゴロンと横に転がした。
「もぅ、ソータ様は世話が焼けるですぅ」
「ゴメンね、これからも毎朝起こしてくれる?」
俺はニッコリしながら聞いてみた。
「起こして欲しいです?」
エステルはキョトンとしながら聞いてくる。
「うん、ずっと……」
「ずっと……、ですか? お嫁さんみたいですね」
エステルはニッコリと笑って言った。
「そういうの、嫌かな?」
俺はゆっくりと起き上がって聞いた。
「……。ずっと一緒なのはうれしいです……、ですが……」
エステルはうつむいて言った。
「何か問題が?」
「……。じ、実は……」
コンコンコン!
ドアがノックされる。
「朝食でーす!」
おばさんが声をかけてきた。
「ハーイ!」
エステルは返事をすると、
「先に行ってるです!」
俺は頭が混乱した。俺の生きてる世界ってどうなっているんだ? 素粒子が波で作り上げてるって話じゃなかったのかよ? 科学者何やってんだよ!
その後もいろいろ考えてみたが、結論は出なかった。ただ、手を揺らせばいつまでも残像はギザギザのまま。この世界は仮想現実空間、それだけは間違いなかった。
その晩、俺はなかなか寝付けなかった。
◇
「ソータ様! 朝ですぅ! 起きるですぅ!」
耳元で大声を出された。
「う? もうちょっと……」
俺は毛布に潜り込む。
「ダメですよぉ! 食堂しまっちゃうですぅ!」
エステルは毛布を引っ張る。
「寝かせてよぉ!」
俺はグンっと毛布を引っ張り返した。
「きゃぁ!」
エステルが俺の上に倒れ込む。
「うわぁ!」
重なる二人……。柔らかい重みが俺を押しつぶす。
この重みも仮想現実? 俺は寝ぼけながらボーっと感じていた。
「起きるです……」
エステルが耳元でボソっという。
俺はエステルの優しい香りを胸いっぱい吸い込みながら考えた。
仮想現実かどうかなんて、どうでもいいのかもしれないな……。仮想現実でもなんでも幸せになれば勝ちなのだから。
3-10. 魔王の悩み
「ゴメン、起きるから先行ってて」
そう言ってエステルを優しくゴロンと横に転がした。
「もぅ、ソータ様は世話が焼けるですぅ」
「ゴメンね、これからも毎朝起こしてくれる?」
俺はニッコリしながら聞いてみた。
「起こして欲しいです?」
エステルはキョトンとしながら聞いてくる。
「うん、ずっと……」
「ずっと……、ですか? お嫁さんみたいですね」
エステルはニッコリと笑って言った。
「そういうの、嫌かな?」
俺はゆっくりと起き上がって聞いた。
「……。ずっと一緒なのはうれしいです……、ですが……」
エステルはうつむいて言った。
「何か問題が?」
「……。じ、実は……」
コンコンコン!
ドアがノックされる。
「朝食でーす!」
おばさんが声をかけてきた。
「ハーイ!」
エステルは返事をすると、
「先に行ってるです!」



