就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

「ど、どういう人と結婚したいの?」
 エステルはチラッと俺を見て、
「昨日の夜に、女神様が夢に出たです。女神様は『あの人がいいんじゃないか』っておっしゃってくれたんですぅ……」
 と、恥ずかしそうに言った。
「あ、あの人って誰かなぁ?」
 心当たりある俺はドギマギして聞いた。
「そ、それは……。ひ、秘密ですっ!」
 そう言って真っ赤になり、
「おトイレ行ってきます!」
 と、言ってテッテッテと駆けて行った。

 ピロン!
 スマホが鳴った。
『そういうの、男らしくないと思うわ』
 女神様からの突っ込みが入る。なんで見てるんだよ! 俺は思わず周りを見回してしまう。
 でも、確かにちょっとズルかった気がする。反省した。
『魔王の件が片付いたら言います』
 そう返事をしておいた。

      ◇

 かなり酔っぱらって二人は宿屋に帰ってきた。
 エステルはベッドにピョンと身を投げると、
「えへへ、幸せですぅ」
 と、最高にうれしそうな顔をして言った。
「今日もいろいろあったなぁ……」
 俺もエステルの隣にゴロンと転がって言った。
「ソータ様と出会ってから、驚くことばかりですぅ」
 エステルはニコニコしながら俺を見て言う。
「それは俺も同じだよ」
 そう言って二人で見つめ合って、笑った。
 そして、俺は酔いも手伝って、
「俺……、今晩……、ここで寝ていいかな?」
 と、勇気を出して言った。
「いいですよ!」
 うれしそうに言うエステル。
 やった! 俺は秘かにガッツポーズ、期待に胸がはちきれそうになった。
「じゃあ、私はソータ様の部屋のベッドで寝るですね! このベッド寝心地最高ですよ!」
 そう、ニコニコして言った。
 あれ……? そういう意味じゃ……、ないんだけどな……。
「じゃあ、また明日! おやすみですぅ!」
 そう言ってエステルは、ピョンとベッドから飛び降りると、鏡の中へと消えて行った。
「あ……」
 俺は力なく手を伸ばし……、はぁ~っと大きく息をついた。
 本当にあの人、俺より年上なんだろうか?
 一瞬、スマホが鳴るんじゃないかと身構えたが、さすがにそんなことは無かった。














3-9. 秒間三百回の世界

「なんだよぉ……」
 俺はやりきれない気持ちを抱えながら上着を脱ぎ、椅子の背に向けてポーンと放った。
 その時、ふと違和感を感じた。