就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け!~異世界でドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ

 このままベッドに押し倒してしまおうか……、一瞬欲望が頭をもたげる。しかし、まだ告白もしていないのだ。グッと我慢をする。
 ちゃんとプロポーズしてから……。さて、どこでどうやって?
 さすがにこんなホコリまみれのまま、自室でするようなものじゃないなと思う。ちゃんとタイミングは図ろう。

「今日はありがとう。ご飯食べに行こう」
 と、ぎこちない笑顔で言った。
「うん、お腹すいたですぅ!」
 屈託のない笑顔で笑うエステル。
 いつになく笑顔が輝いて見えた。

      ◇

 エステルお勧めの近場のレストランへと移動する。ここは揚げ物が美味しいそうだ。

 まずはお互いの健闘を祝って木製のジョッキで乾杯。
「カンパーイ!」「かんぱーい!」

 ジョッキをぶつけると……、

 ドゥガーン!

 派手な音がしてジョッキが爆発した……。
 泡だらけになる二人……。

 店員がタオルを持って飛んできた。
「ごめんなさい、何があったんでしょう?」
 申し訳なさそうな店員に、俺はタオルで拭きながら言った。
「いや、ちょっと力加減を間違えただけです。ごめんなさい。おかわりください」
 何があったのか全く分からないエステルに、
「ステータスを見てごらん」
 と、言った。
「ステータス……? ひゃぁ!」
 驚くエステル。
「レ、レベル百二十……ですぅ」
 エステルは困った顔をして俺を見る。
「Aランク冒険者、ネオ・エステルになったな」
「え? 私、殺虫剤を下ろしてただけですよ?」
「殺虫剤を置いてただけの俺はレベル百五十だよ」
 苦笑する俺。

 見つめ合う二人。
 そして……、
「くっくっく……」「ひゃっひゃっひゃ……」
 お互い変な笑いが湧いてくる。段々おかしくなってきて、
「はっはっは!」「きゃはは!」
 大きく笑った。

 そこに新しいジョッキがやってくる。

「よし! 俺たちスーパーAランクパーティにカンパーイ!」「かんぱーい!」

 うれしくなってジョッキをぶつけた。

 ドゥガーン!

 また泡だらけである……。俺は自らの馬鹿さ加減にちょっと呆れたが、それより湧き上がるうれしさが勝っていた。

「はっはっは!」「きゃはは!」
 俺たちはお互いのずぶ濡れの様を見てまた大笑いした。