やがて、フロアが見えてきたが、そこにはうじゃうじゃと魔物の影がうごめいていた。モンスターハウスだ。俺はハチ・アブ・マグナムZのロックを外し、噴射を始める。
 「ギャウッ!」「グギャァ!」
 次々と溶けていく魔物たち。
 やがて、フロアに降りると、俺は残りの魔物たちに向けて噴射を続けた。
 この時、カン! と俺の左腕の丸盾に何かが当たった。見ると、矢が転がっている。
 矢で射られているのだ。
「エステル! 弓矢だ! 気をつけろ!」
 そう言って辺りを見回すと、遠くで弓を引いている魔物が二匹見えた。残念ながら殺虫剤が届く距離ではない。

「きゃぁ!」
 エステルが叫んで倒れた。
「エステル――――!」
 見ると、矢が太ももに刺さっている。これはマズい。
 俺はエステルを物陰に運び、辺りを見回した。他の魔物は倒し終わったようだった。
 しかし、弓矢の魔物は相変わらず射程外から淡々と矢を射ってくる。矢はマズい。当たり所が悪ければ死んでしまう。
 俺はゆっくりと深呼吸を繰り返し、
「セイッ!」
 と、掛け声とともに盾を前にし、弓矢の魔物に向かって駆けだした。魔物は小人で頭の上に光るものを乗せ、可愛い顔しながら弓を巧みに使って矢を射ってくる。
 俺はカン! カン! と盾で矢をはじきながら接近する。射程距離に入ると横にステップして殺虫剤を噴射し、弓の魔物に浴びせた。
 「グギャッ!」「グゥゥ!」
 と、悲鳴をあげ、溶けていく魔物たち。

 俺は急いでエステルの方に戻る。エステルは太ももを抑えながら脂汗を流し、泣いている。
「うっうっうっ……、ソータ様ぁ……」
「大丈夫だからね」
 そう言って俺は矢の刺さっている所の服を裂いた。すると、真っ白な美しい太ももに矢がブッスリと刺さり、刺さったところは赤黒く変色していた。
 俺はあまりにも生々しい惨状に思わず気が遠くなり、目をつぶった。こんなのどうしたらいいのか? 
 俺は混乱して動けなくなり、手が震えた。











3-3. 立ち昇る死の香り

「ソータ様ぁ……」
 エステルは荒い息をしながら痛みに耐えつつ俺に訴える。
 矢は抜かねばならないが、矢じりが残ってはマズい。つまり、切り裂いて取り除かねばならない……、が、切るの? 俺が?
 俺は思わずクラクラした。