柔らかいエステルの身体から、温かい体温が伝わってくる。

「私……、ソータ様のおそばに居て……いいんでしょうか?」
 いつになく低い声で深刻そうに言うエステル。
「えっ?」
 エステルはゆっくりと体を起こすと、
「私、こんなにドジで、ソータ様の足を引っ張るかもしれないです」
 暗い顔でそう言った。
「何言ってるんだ、エステルは十分に役に立ってるよ」
「そうでしょうか……? 私恐いんです」
「え? 何が?」
「いざという時にドジ踏んで、多くの人に犠牲が出ちゃったりするんじゃないか、って思うんです」
 そう言って、涙をポトリと落とした。
 俺はそっと起き上がり、優しくエステルをハグして言った。
「エステルが失敗したなら、それはエステルに仕事を頼んだ人の責任なんだ」
「えっ?」
「だから、気に病む事はないよ」
「うっうっ……、ソータ様ぁ……」
 しばらくエステルは俺の胸で泣いていた。朝に『ポンコツの出来損ない』となじられたことで小さな胸を痛めていたに違いない。俺はゆっくりとサラサラな金髪を何度も何度もなでてあげた。

 しばらくすると、スースーという寝息が聞こえてきた。
 泣き疲れて寝てしまったらしい。まるで幼児みたいだ。
 俺はそっとベッドに横たえると上から毛布をかけた。
 綺麗な金髪に透き通る白い肌、まるでお人形さんみたいなエステル。
 俺はしばらくエステルの寝顔を眺め、
「いい夢見てね……」
 そう言って髪をそっとなでる。

 そして、慣れない手つきでランプを消し、手探りで部屋へと戻った。

      ◇

 翌朝、俺が自分のベッドで寝ていると、バーンとドアが開き、
「ソータ様ぁ、朝ですよ――――! ご飯ですぅ!」
 と、エステルが上機嫌で入ってきた。

「うーん、もうちょっと寝かせて……」
 俺は毛布を引っ張り上げてもぐる。
「宿のおばさんが『早く』って」
 そう言いながら、エステルは毛布を引っ張る。
 食事つきコースを選んだのは失敗だった。
 俺は観念してゆっくりと起き上がり、頭をかいて大きなあくびを一つ……。
 そして、エステルを見ると……額にハチマキのような金属プレートをしている。
「あれ? それ、どうしたの?」
「今日から私は変わったのです! ネオ・エステルとお呼びください!」