生まれてから21年間のすべての記憶や、心の奥底の欲望や(よこしま)な考えまで一切合切全て読み取られたような気がして、俺はブルっと震えた。
 そして、その時俺は気が付いた。この人たち、歩くふりだけして歩いていない、少し浮いて飛んでいるのだ。美奈先輩だけが特別ではなく、みんな神様……、なのでは?










2-13. 神様の中の神様

 俺は彼らを見送り、席を立つと、会計に残っていたアラサーの男性に声をかけた。
「すみません、美奈さんの後輩なんですが、もしかして美奈さんのベンチャーの方ですか?」
「え? あぁ、そうですね。AIベンチャーですね」
 彼は落ち着いた口ぶりで答えた。特段神様っぽい雰囲気は感じない。普通の人間のように見える。
「AI!? 神様……とか宗教関係ではないんですか?」
「あはは、AIと神様は不可分だからね」
 そう言って男性は笑った。俺は何を言ってるのか全く理解できなかった。神とAI、美奈先輩とAIにどんな関係があるんだろうか?
「美奈ちゃんに……、何か頼まれましたか?」
 男性は俺の目を見て、申し訳なさそうに聞く。
「じゅ、十万匹の魔物倒して世界救ってくれって……」
 俺はこんな事言っていいのか戸惑いながら言った。
「ええっ!? そりゃ大変だ……。でも、美奈ちゃんがそう言うからには何か勝算があるんだよ。ああ見えて世話好きだから」
 そう言って男性はニッコリと笑った。
(まこと)――――! 二次会行くわよ、二次会!」
 店の外から美奈先輩の声が響く。
「はいはーい!」
 男性はそう答えると、
「君とはまた会う事になりそうだな。グッドラック!」
 そう言ってサムアップをして、出て行った。
「リーダー! レッツゴー!」
 ムキムキの白人が男性に叫ぶ。
「リーダー!?」
 俺は驚いた。ただの人間だと思っていた穏やかな男性が、なんと神様たちのリーダーだったのだ。神様の中の神様、あの男性が……?

 呆然(ぼうぜん)としながら後姿を追っていると……、いきなり消えた。
 美奈先輩もみんなも全員一瞬で消えたのだ。そして、その異常な事態に街の人は誰も不自然に思っていないようだった。