「なぜ……、女子大生なんてやってたんですか?」
「ひ・み・つ……。あなたが活躍したら……教えてあげるかも……ね?」
 そう言って先輩はいたずらっ子の笑みを浮かべた。女神様には女神様の事情があるという事だろうが……、理由など全く見当もつかない。

「魔物十万匹って一人じゃ無理ですよ。先輩がエイッて倒してくださいよ」
 俺は素直にお願いする。
「うーん、あの星、そう単純な話じゃないのよね~」
 そう言って先輩は渋い顔をして首をひねる。
「え? 魔物倒すだけじゃ解決しないってこと……ですか?」
「ちょっと魔王と相談してくれる?」
 いきなりな無茶振りの依頼に俺はビビる。
「そ、相談なんて、できるんですか?」
「会えばわかるわ。魔王の居場所は後で送っておくね。じゃ、世界を救ってねっ! チャオ!」
 そう言って先輩はウインクをすると、仲間の席に戻っていった。
 なんとも軽い世界救済の依頼である。俺はどう考えたらいいのか混乱した。

「一体どういうことなんだろう……。魔王に会えって……」
「ソ、ソ、ソータ様! め、め、女神様ですよ!」
 エステルは身を乗り出し、俺の手を取って取り乱す。

「知ってるよ」
「え? なんで女神様がレストランにいるですか?」
「うーん、なんでなんだろうね? 俺にも分からない」
「女神様ですよ! 女神様!」
「分かってるよ」
 エステルは壊れてしまったかのように混乱していた。僧侶としてずっと信奉してきた世界を作った偉大な女神様……。それは天上界の聖なる存在かと思ったら普通にレストランでワイン飲んで笑っている。エステルにはこれをどう理解したらいいか全く分からないようだった。
 まぁ、俺にも分からないんだが。

        ◇

 やがて団体さんはドヤドヤと帰っていく。
 先輩はこっちを見ると、
「じゃあね! 魔王によろしくぅ!」
 と言って、俺に投げキッスをして出て行った。

 見ると、メンバーはキリストの肖像画に似た男性や、筋肉ムキムキの白人男性、水色の髪をした女の子など、みんなただ者ではないオーラを出している。
 俺が目で追っていると、女の子がチラッとこちらを見た。その瞬間、俺に衝撃が走った。すべてを見透かされたような悪寒に貫かれたのだ。
「ひっ!」
 女の子はニヤッと笑う。