プシュ――――。

 すると、一瞬何かが出てきたようだが、コロンと魔石が転がった。
 そして、魔法陣もランプも消え、出口の扉がギギギっと開く。

「あれ? ボス……は?」
「ガーゴイルが出るはずなのに……」
 女の子たちは口々に不思議がる。

「もう、討伐完了だよ。お疲れ様!」
 俺はニヤッと笑った。
「えっ!? どういうことですか?」
 女の子たちは駆け寄ってくると、俺が拾った紫色に輝く魔石を見た。
「すごい! すごーい!」
「さすがCランクですねっ!」
 そう言いながら女の子たちは俺の腕にしがみついた。
 なんだこのモテ期は!?
 俺は両腕に押しつけられた豊満な胸の柔らかい温かさに思わず心臓が高鳴った。
「いやぁ、それほどでも……」
 ついニヤけてしまう俺。

 見ると、エステルが寂しそうに俺をジーッと見ている。
 俺はハッとして、
「は、早く帰りましょう!」
 そう言ってポータルへと歩き出した。

 無事地上に戻り、ギルドへ向けて一緒に歩く。
「ソータさんはなんでそんなに強いんですかぁ?」
「その缶は何なんですかぁ?」
「あの部屋は何だったんですかぁ?」
 女の子たちが興味津々で次々と聞いてくる。
 いちいち胸を押しつけながら聞いてくるのは何なんだろうか? 困惑しながらもついニヤけてしまう。
 これ以上秘密を知る人を増やしてもいけないので、
「それは秘密、もっと仲良くなってからね」
 とはぐらかす。
「えーっ……、じゃぁ、今晩、一緒に飲みませんかぁ?」
 魔術師の女の子は上目遣いに聞いてくる。
「いやいや、私と行きましょうよ! いいお店知ってるんですぅ……」
 僧侶の子も実に積極的だ。
 二人とも美人だし、エステルより少し年上な分、色香も凄い。
 俺は生まれて初めてのモテ期に顔が緩みっぱなしである。
 でも、彼女たちも俺も本気で浮かれている訳ではない。あっさりと失われた冒険者の命を目の前にして、はしゃいでいないと心がどうにかなりそうだったのだ。それだけ彼の死は暗い影を俺たちの心に落としていた。

 ふと、後ろを振り返ると、エステルは普段通りにニコッと笑った。もしかしたらエステルの方が本当は大人なのかもしれない。

       ◇