「素粒子……かな?」
「粒子……? 小さな(つぶ)……ですか?」
「粒って言っても、波なんだけどね」
「波? もう! 何言ってるか分かんないです!」
「うん、俺も良く分からん」
 そう言って苦笑した。

      ◇

 スタバの大きなガラスドアを押し開ける。
「いらっしゃいませー」
 という声がかかり、エステルは
「うわぁ、綺麗~」
 と、言いながらガラスのショーウィンドウに駆け寄った。
 真っ赤なストロベリータルトや緑の抹茶のスコーンに、オレンジのレアチーズケーキがずらりと並ぶ。
「みんなおいしそう!」
 エステルは目を輝かせて言った。
「好きなの選びな。コーヒーでいい?」
「じゃぁ、これ! じゃなくて……、こっち……。うーん、やっぱりこれ! それとジュースがいいですぅ……」
 エステルがちょっと恥ずかしそうに言う。
 俺はポンポンとエステルの頭を叩くと、チョコチャンクスコーンとコーヒーを選び、お姉さんに伝えた。

 








2-3. ウサギ爆笑

 全面ガラス張りの壁際に席を取った。
 外には国道15号線が通り、プリウスに黒塗りのハイヤーに、トラックにクレーン車にバス……、いろんな車がひっきりなしに走っている。
 エステルはその車たちを一生懸命目で追って、
「うわぁ……」
 と、感嘆の声を上げていた。
 俺はそんな無邪気なエステルの横顔を、ボーっと見ながらコーヒーをすする。
 可愛いよなぁ……。

 ただ、異世界人を気軽に連れ出しちゃったけど、良かったのだろうか?
 俺はそんなことを思いながらスコーンをかじった。熱で少し溶けたチョコの甘みがじわっと心を癒す。

 俺はスマホを取り出し、美奈先輩にメッセージを送った。
『鏡の向こうに行けちゃったんですけど、俺はどうしたらいいですかね? 女神様、アドバイスをお願いします』

 ピロン!

 すぐにスタンプの返信があった。
 見ると、可愛いウサギが爆笑している絵だった。
「はぁ!?」
 これは一体どういう事だろうか?
 エステルに、『君たちが祀ってる女神様からこんなスタンプが来たぞ』と、見せてやりたい衝動に駆られる。君たちの信奉する女神様ってこんなんだけどいいんか? と小一時間問い詰めたい気分だ。