毛布のすき間からのぞくと、エステルが正座して申し訳なさそうな顔でジッとこっちを見ている……。

「エステル……。シャワーでも浴びてきなさい」
 俺はエステルを追い払う。
「ソータ様……。私、昨日の記憶が無いのですが……、何か粗相(そそう)を……して……ないでしょう……か?」
「ん? 気にしなくていいよ」
 俺は適当に流す。
「え? 私、何したんですか!? まさか、はしたない事を……」
 エステルが青い顔して言う。
「単に酔ってトイレで吐いてただけだから大丈夫」
「えっ!? もう……、お嫁にいけないですぅ……」
 エステルはそう言って崩れた。
「何言ってんの、良くあることだよ。エステルほど可愛ければ誰とでも結婚できるよ」
 俺はフォローする。
「えっ?」
 エステルはキラキラと光る目で俺を見て、
「も、もう一度……」
「ん? 可愛いから結婚はできるんじゃないかって……こと?」
「か、可愛い……ですか?」
「うん、まぁ、可愛い……と思うよ」
 言ってて俺が恥ずかしくなってくる。
「うふふ……。あ、でもクラウディアさんの方が……いいですよね?」
 そう言ってチラッと俺を見た。
「彼女は大人の美人さんだからなぁ……。でもエステルもあと何年かしたらクラウディアみたいになるんじゃないかな?」
「そ、そうですか……」
 なぜか、しょげるエステル。
 何かマズいことを言ってしまったのだろうか……?

     ◇

 すっかり目も覚めてしまったので、スタバに朝食を食べに行くことにした。
 人気(ひとけ)の少ない朝の街を二人で歩く。

「ちょっと寒いですぅ」
 そう言いながらエステルは俺の腕にしがみついた。ほんのりとエステルの匂いがあがってくる。
 俺はちょっとドギマギしながら、
「そ、そんなに寒いかな?」
 と、言うと、
「寒いですっ!」
 と、言って俺を見あげてニコッと笑った。
 こんな所を大学の友達に見られたら恥ずかしいな、と思いつつ、まるで恋人のようなやりとりに、ついニヤけてしまっている自分がいた。

「それにしても高い建物ばかりですぅ」
 エステルはキョロキョロする。
「うちの世界には魔法はないけど、その分科学が発達してるんだよ」
「科学?」
「あー、この世界が何でできてるかとか、どうすると便利な物が作れるかとかだね」
「え? この世界って何でできてるんですか?」