なぜ彼女はこの世界への来かたを知っているのか、と思っていたが、知っていて当然なのだ。この世界は彼女が作ったものだったのだから。

 なぜそんなことができるのか、なぜ俺を送り込んだのか、一体この世界は何なんだ?

 俺は思わずめまいがした。

 ふぅ……。

 俺は大きく息をつく。
 何だか自分の意志とは関わりのない、大きな流れに翻弄(ほんろう)されている気がした。先輩には話を聞きにいかないとなと思った。

 振り返ると、エステルが席について机に突っ伏している。

「おい、どうした?」
 俺が駆け寄ると、
「きぼちわるいですぅ……」
 と、青い顔をしている。飲み過ぎだ。
「あー、だから言わんこっちゃない」
「なんか出そうですぅ……。ぅおぅぅ」
 えずきだした、ヤバい。
「トイレ! トイレ!」
 俺は教会内を見回すが、どこがトイレか分からない。
 仕方ないので、鏡を取り出し、エステルの頭からかぶせて俺の部屋へと転送させた。
 そして、教会の奥の物置みたいな所に鏡を立てかけ、俺も急いで部屋へと戻った。

 床で動けなくなっているエステルを、トイレまで運んで背中をなでてやった。
「ぅおぉぉ! うぇぇ……」
 ビチャビチャと便器に吐くエステル。
 なんと世話のかかる奴だろうか。クラウディアの言うことを聞いた方が良かったかも……。少し後悔した。

 その後、水を飲ませてベッドに横たえる。
 エステルはハァハァと言いながら苦しそうにしている。
 しかし、俺には解毒も治癒も使えない。申し訳ないが自分で回復していってもらうしかない。
 と、なると……。
 今日も俺は床で寝るの? トホホ……。






2-2. チョコチャンクスコーン

「ソータ様! 申し訳ございません!」
 寝てると耳元で大きな声がする……。
 あー、またエステルだな……。
「いいから、寝かせて。眠いんだから……」
 俺は毛布をかぶる。

「ダメです! ベッドで寝てください!」
「いいから寝かせて……」
 と、言って、昨日のトラブルを思い出した。
 またエステルと密着する事になったら……、いいか……。
 いやダメだ!
 俺はムクりと起き上がり、無言でベッドに転がった。
 しかし、ベッドに染み付いたエステルの甘い香りにたっぷりと包まれ、寝るどころじゃなくなってしまった。健全な成年男子にはキツい状況だ。