正直言えば、クラウディアと一緒にお宝狙った方が正解なんだろう。まだ誰も到達したことのないお宝の部屋……きっと何億円じゃ済まない金の臭いがする。
 でも、エステルとクラウディア、どっちと冒険したいかと言えばエステルだ。クラウディアの方がナイスバディだし、優秀なのも間違いない。でも……、利益でつながる人間関係はぜい弱。損得勘定が合わなくなった瞬間裏切られるリスクが常に付きまとう。
 その点、エステルは損得で動いていないから絶対裏切らないだろう。

 しかし……。あのナイスバディと仲良く……なりたかったな。
 俺の煩悩が後悔を誘っていた。







2章 創世の女神

2-1. 創世の女神

「ここがうちの教会デース!」
 上機嫌なエステルは、腕をピンと伸ばして紹介する。
 ゴシック様式に似た重厚な石造りの教会は尖塔を持ち、ずいぶんと立派だ。

「それでは、ご案内しまーす!」
 そう言って通用門のカギを開けて中へと入っていくエステル。
 エステルの家に行くって話だったのに、なぜ教会へ行くのか?
 俺は疑問に思ったが、エステルは楽しそうなので、仕方ないかとついて行った。

 教会の中へ入ると中は広く、正面には立派なステンドグラスがならび、壇上には巨大な女神像が飾られていた。
「おぉ……、凄いな……」

 思ったより壮麗な教会に目を奪われる。さっきの料理といい、異世界の文化には驚かされることが多い。まるで海外旅行しているみたいだ。

 俺は美しい大理石でできた女神像へと近づき、エステルに聞いた。
「これが君たちの神様?」
「そうデース! この世界を作られた偉大なる女神様、ヴィーナ様デース!」
 近くから見上げると、石像は非常に美しく精緻に作られており、ほれぼれとする……。
 が、この顔、どこかで見たことがある……。整った小顔でシャープなギリシャ鼻……。

 美奈(みな)先輩だ!
 そう、これは俺に飲み会で鏡の通り抜け方を教えてくれた美人の先輩、美奈先輩じゃないか!
 サークルで一緒にダンスを踊っていた先輩がなぜ、異世界で女神様として(まつ)られているのか?
「美奈先輩……。美奈……、ヴィーナ……、ん?」
 『美奈』を音読みすると……『ビナ』! 名前まで一緒じゃないか!
 彼女がこの世界を作り、俺をいざなった……。