「残念ながら私はただの薬剤師ですね」
 と、淡々と嘘をつく。
「稀人だったら貴族扱い、上流階級の暮らしができるんだぞ?」
 ギルドマスターは身を乗り出してアピールする。
「マスターがもし稀人だったら申告しますか?」
 俺は極力表情を出さないようにしながら聞いた。
 マスターは(まゆ)をしかめ……、腕を組んで考え込み……、ニヤッと笑って言った。
「まぁ、しないだろうな」
 俺はニコッと笑い、
「もし、将来稀人になる事があったら申告します」
 そう返した。
「……。まぁいい。君も聞いているかもしれないが、今、人類は危機に立たされている。最近になって頻繁に十万匹規模の魔物の大津波が街を襲ってくるようになった。すでにいくつもの街が滅ぼされている」
 ギルドマスターは苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
「深刻ですね……」
「それに対抗する切り札が稀人……と、されている。君もこのギルドの一員になるという事であれば、魔物の侵攻の際には力を貸してくれないと困る」
「もちろん、そのつもりです」
 ギルドマスターは俺の目をジッと見据え……、
「頼りにしてるぞ……」
 と、熱を込めて言った。
「が、頑張ります」
 俺は気迫に圧倒されながら答えた。

「それで、ギルドカードのランクだが……、双頭のワイバーンを一人で倒せるなんてのはもはやSランクだ。しかし……初発行の最高ランクはCなのだ。まずはCランクから始めてもらうでいいかな?」
「私は何でも」
 そもそもランクが何を意味するのかもわかってないのだ。そう答える以外ない。

「よろしい! では、Cランク冒険者のソータ君、これからよろしく!」
 ギルドマスターは右手を差し出し、俺は握手をする。
 彼の手のひらは皮が厚くゴツゴツとして、歴戦の猛者の風格を感じさせた。













1-18. 美少女のヒモ

 一階に戻り、魔石を換金したら全部で金貨十五枚ちょっととなった。百万円近い利益だ。なんかもう就活なんて馬鹿らしくなってきた。
 そしてCランクの認識票とギルドカードを受け取る。認識票は赤茶色の銅の板のネックレスで、一目でCランクと分かるようになっているらしい。ちなみにBランクだと銀でAランクだと金だそうだ。なお、エステルは駆け出しのFランクなので陶器。ちょっと安っぽい。