1-3. 時空を超える鏡
時をさかのぼる事数十分、俺は東京のワンルームの自宅にいた――――。
今日も面接。リクルートスーツを着込み、最後に鏡でチェックをする。でも、鏡を見ながら俺は、
「行きたくねーなぁ……」
と、つぶやいていた。どうせまた人格否定されて落とされるのだ。もう何十通もお祈りメールをもらってきた俺には全て分かるのだ。俺は大きくため息をつき、鏡の向こうの疲れ切った顔をしばらくボーっと見ていた。
その時ふと、昨晩飲み会でサークルの美人の先輩に言われたことを思い出した。
『就活が嫌になったら、殺虫剤持って、鏡に【φ】って書いてトントンと二回叩くといいわ。就活しなくてよくなるから』
先輩はニヤッと笑いながら、俺を見ていた。なんとも荒唐無稽な話である。
その時は、相当酔っぱらっていて、
『なんすかそれ! そんなんで就活しなくてよくなるなら、みんなやってますよ! なんすか殺虫剤って!?』
と、食ってかかったのを覚えている。先輩は在学中にベンチャーを起業したらしいから、就活の苦しさが分かってないのだろう。
おまじないでも何でもやってみるか……。
時をさかのぼる事数十分、俺は東京のワンルームの自宅にいた――――。
今日も面接。リクルートスーツを着込み、最後に鏡でチェックをする。でも、鏡を見ながら俺は、
「行きたくねーなぁ……」
と、つぶやいていた。どうせまた人格否定されて落とされるのだ。もう何十通もお祈りメールをもらってきた俺には全て分かるのだ。俺は大きくため息をつき、鏡の向こうの疲れ切った顔をしばらくボーっと見ていた。
その時ふと、昨晩飲み会でサークルの美人の先輩に言われたことを思い出した。
『就活が嫌になったら、殺虫剤持って、鏡に【φ】って書いてトントンと二回叩くといいわ。就活しなくてよくなるから』
先輩はニヤッと笑いながら、俺を見ていた。なんとも荒唐無稽な話である。
その時は、相当酔っぱらっていて、
『なんすかそれ! そんなんで就活しなくてよくなるなら、みんなやってますよ! なんすか殺虫剤って!?』
と、食ってかかったのを覚えている。先輩は在学中にベンチャーを起業したらしいから、就活の苦しさが分かってないのだろう。
おまじないでも何でもやってみるか……。